男所帯である自衛隊の内輪の宴席では、裸の芸などは日常茶飯事だ。それを見て、女性自衛官が目を覆い恥ずかしがっているかといえば、そんなことはまったくなく、クールにひと言。
「もっと面白いのをヤレ!」
大谷三穂2等海佐とは、何年も前に、そんな宴席で出会った。「初の女性艦長を目指しているらしい」ということは聞いていたが、その後、2013年に練習艦「しまゆき」艦長となって夢をかなえ、さらに今年、約220人が乗り込む護衛艦「やまぎり」艦長に着任したことは、画期的なニュースだった。
日本では「護衛艦」だが、国際的には「destroyer」と呼ばれ、武器を搭載して乗員も戦闘員だ。その指揮を執るという強さは、一体どこから来ているのか。
大谷2佐は、防衛大学校の女子1期生だ。それまでは、京都で女子大生をエンジョイしていた。だが、2年生の時に人生観が一変する。きっかけはテレビの向こうに映し出された湾岸戦争(1991年)の映像だった。
「こんな生ぬるい生活していていいのか、と思いました。親のスネをかじって…。なんだか、恥ずかしくなったんです」
くしくも、その直後に新聞で「防衛大学校が女子に門戸開放」という記事を見つけた。親は反対したが、「受験だけでも」と説得し、92年に防大に入学した。「国の役に立ちたい!」、その一心で、それまでの自由とは真逆の息もつかせぬ過酷な生活が始まった。