実はあなたも、映画館のスクリーンでその姿をみているかもしれない。550万人以上を動員した大ヒット映画「シン・ゴジラ」に端役として出演し、エンドロールにも「長沼毅」の名が登場している。
「製作にも協力しています。あの映画のなかのゴジラは『熱核エネルギー変換生体器官』を持っていて、水と空気があればありとあらゆる物質を作り出すことができるのですが、『その理屈を考えてください』と頼まれたんですよ」
広島大大学院の教授で、専門は「生物海洋学、微生物生態学、極地・辺境などの苛酷環境に生存する生物の探索調査」。北極、南極、深海、砂漠…。それらの環境下の生物に情熱を傾け、いつの頃か「科学界のインディ・ジョーンズ」と呼ばれるようになった。
幼稚園児の頃から「自分はどこからきたのだろう」と考えるような自称「かなりのませガキ」。
そのませガキの転機は高校生のときにやってくる。
「海底火山でものすごい生物が発見されたんです。水深が何千メートルもある真っ暗な世界に生きているのだから、植物でなくて動物のはず。その謎の深海生物は、人間にとって猛毒である火山ガスをエネルギーにして生きているのでは? という話になったんです」
ちょうどそのころ、地球以外にも海底火山があるという説が登場した。
「生命の起源が海底火山にあるとすれば、よその星にも生命がいるのではないか。そう思ったら、俄然面白くなって」
大学は生物の教科書に載っていた研究者、原田馨氏に感銘を受け、筑波大第二学群生物学類へ進学する。だが、研究生活は出だしからつまずく。