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紅白で大注目! 米津玄師が歌った美術館の“逆転秘話”

 早いもので1月も第3週に。つい先日、初詣で「大吉」を引いて「今年は良いこと、起こりそう」とワクワクしたのに、もう仕事の壁にぶちあたって…という方は少なくないかもしれません。

 しかし月並みな言葉ですが“ピンチはチャンス”なのです。そのお手本は探せば結構見つかるもの。昨年末のNHK紅白歌合戦で米津玄師さんが大ヒット曲「Lemon」を歌った舞台がそのことを証明してくれました。幻想的なろうそくの光に照らされた長い階段と、ぼんやり浮かび上がる礼拝堂の名画…番組では米津さんの故郷・徳島県の美術館としか紹介されませんでしたが、私には一目でわかりました。世界初の陶板名画美術館「大塚国際美術館」。私にとっては約20年前のオープン当初にPRを仕掛けた、忘れられない美術館です。

 当時は、世界の名画を2000年後の未来へ遺すという陶板名画の価値がなかなか理解されませんでした。それどころか「名画のコピー」と軽くあしらわれることが多かったため、正しい理解とイメージを促そうと、私たちはあの手この手でPRを仕掛けました。しかしいくらアピールしても人々が抱く印象を変えることはできず、私は手応えを得られない虚無感に苛(さいな)まれてしまいました。

 そんな折、美術館のマーケティングを担当されていた女性が「理解されないなら、それを武器に変えればいいじゃない」と言い放ったのです。名画のコピーと軽く見られるなら、コピーにしかできないことで勝負するという意味です。具体的には“丈夫で壊れない特性を生かした、陶板名画ならではのダイナミックな舞台演出”を指していました。そして美術館を舞台に世界的名画を演出に生かす、陶板名画ならではのイベントが行われるようになったのです。

 なかでも2004年に行われた女優の水野真紀さんと徳島が地元の後藤田正純衆院議員との荘厳な結婚式や、09年に始まった名画を背景に名優が舞う歌舞伎は大きく報道されました。この時、私はすでに美術館のPRから離れていましたが、話題になるたびに「理解されないなら、それを武器に変えればいい」という彼女の言葉を思い出し、密かに応援していました。

 そしてついに昨年末、紅白の舞台となって全国の注目を集めたのです。もう陶板名画を軽くあしらう人はいないでしょう。奇跡が起こった気がして、私は思わずテレビに向かって拍手を送りました。

 そういえば昨年末の紅白では、もうひとつ奇跡が起こりました。平成のJPOPを代表するユーミンとサザンオールスターズの共演です。特に私を含め、平成に青春を過ごした世代にとっては感涙ものでした。奇跡は本当に起こるもの。平成最後の紅白は、それを教えてくれたのかもしれません。(隔週水曜掲載)

 ■殿村美樹(とのむら・みき) 株式会社TMオフィス代表取締役。同志社大学大学院ビジネス研究科「地域ブランド戦略」教員。関西大学社会学部「広報論」講師。「うどん県」や「ひこにゃん」など、地方PRを3000件以上成功させた“ブーム仕掛け人”。

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