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3組に1組は離婚すると言われる時代…夫婦「ペアローン」の落とし穴

 最近の20代、30代のカップルはダブルインカムが普通になっているという。結婚して奥さんが専業主婦になるのは、もはや主流ではなくなった。

 だから、マンションも郊外型が売れない。ご主人だけでなく奥さんも都心に通勤するから、郊外よりも近郊や都心、その周縁部が好まれる。

 マンションの価格は主に立地で決まるから、都心へ近づくほど高くなる。東京・山手線の周縁部に建つ新築マンションは、20坪前後の広さで7000万円や8000万円クラスが当たり前になった。大阪でも環状線の内側なら6000万円でも高いとは言えなくなっている。

 そういう物件を購入しているカップルは、往々にしてペアローンを組んでいる。つまり、マンションを共有名義にしてそれぞれが住宅ローンを組むのだ。

 メリットは夫婦ともに住宅ローン控除によって税金が節約できること。マンションの販売現場ではしきりとそのメリットを強調してペアローンを勧めているという。販売側からすると、売れさえすればどんなカタチでもよいのだ。

 ところが、今や結婚した3組に1組は離婚すると言われる時代。ペアローンを組んだ夫婦が離婚する場合は、当然そのことが問題になる。

 そのマンションを売却した場合、住宅ローンの残債が発生しなければ、まだいい。しかし、売却してもローンが残るようだと離婚協議はさらに複雑になる。

 住宅ローンの多くは35年返済で組まれる。新築マンションを35年ローンで購入した人は、「買った」と思っているかもしれない。しかし、それは誤りだ。

 その物件の所有権は暫定的に購入者に与えられているに過ぎない。ローンの支払いが遅延したら、たちまち登記簿の乙区に抵当権を設定している金融機関に差し押さえられてしまう。うまくいっても任意売却。最悪の場合は裁判所による競売になる。いずれも購入者はそのマンションを失ってしまう。

 普通の35年ローンでさえ、そういうリスクを背負っている。ましてやペアローンを35年返済で組むことは、さらに大きなリスクを背負うことに等しいのだ。離婚しない3分の2に入らなければならない。

 また、マンションを購入する場合の基準を、今払っている家賃と住宅ローンを組んだ場合の返済額を比較して決めているケースが多い。確かにそういう手法もあるが、35年ローンの場合は「35年間払い続ける」という条件が課される。

 今の時代、誰が35年間も自分の収入が現状かそれ以上を維持し続け、大きな病気やけがをせず、ましてや離婚もせずにいられると確信できるのか。仮に35年払い続けた場合に完全な所有権を手にするのは築35年の老朽物件となる。

 住宅購入で背伸びをすると、その分だけ人生のリスクを高める。夫婦のペアローンや35年返済で高額のお金を借りる前に、人生の先行きについて冷静に考えてみるべきだ。

 ■榊淳司(さかき・あつし) 住宅ジャーナリスト。同志社大法学部および慶応大文学部卒。不動産の広告・販売戦略立案・評論の現場に30年以上携わる(www.sakakiatsushi.com)。著書に「マンションは日本人を幸せにするか」(集英社新書)など多数。

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