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消費税率引き上げも…大局そっちのけの“低調国会”

 今通常国会は10月からの消費税率引き上げをめぐる「消費税国会」になるどころか、小物官僚の平謝りで終始するだけの厚生労働省不正統計問題ばかりに血道を上げる。このまま増税すれば、外需の減退と重なって経済にはデフレ圧力が加わり、国民全体の生活を追いつめかねないという大局そっちのけだ。政治をチェックするはずのメディアの大多数が増税容認なのだから、無理もない。

 1997年度の消費税率の3%から5%への引き上げは、その後、20年以上も続く慢性デフレを呼び込み、2014年度の税率8%実施はアベノミクスが生み出した脱デフレの芽を摘み取ってしまった。外需がトランプ景気のおかげで好調な間は、内需の低迷は相殺されたが、輸出に陰りが見えた昨年10~12月期の国内総生産(GDP)は前年同期比で名目、実質ともマイナスに転じ、GDP全体の物価指数を表すデフレーターもわずかながらだがマイナスに落ち込んだ。消費税増税後4年経っても、デフレ圧力は日本経済に取り憑(つ)いている。

 以上のような見解を持つ経済専門家や経済学者は少数派で、メディアはほとんど取り上げない。財務官僚や財務省御用エコノミストはひたすら無視する。

 だれも異常に思わないのか、と思っていたら、正統派もいることが最近わかった。13年4月から5年間、日銀副総裁を務めた岩田規久男氏である。

 岩田さんの近著『日銀日記』(筑摩書房刊)によると、14年度の消費税増税の後、旧知の鈴木亘学習院大学教授が雑誌に寄稿した原稿で「消費税引き上げは大失敗だった」のくだりを削除しないと載せないと言われたことをメールで知ったという。14年度の実質成長率はマイナスに落ち込んだが、「これは外発的ショック由来のものではなく、政府自らの内発的ショックによってもたらされた戦後初めてのマイナス成長となる。(中略)まさに人災としか呼びようのない『大失策』と言える」と本質を衝(つ)いた。そして「新聞でも、雑誌でも、通信社の報道でも、『消費税増税の失策で景気が悪化した』ということはタブーのようで、(中略)まるで、中国のように、マスコミが『報道禁止令』にしたがっているかのようだ」とつづっている。

 岩田さんは日銀副総裁時代、上記のような正論を封じられた。財務省OBの黒田東彦(はるひこ)総裁が8%増税前の13年9月、国債暴落リスクを喧伝(けんでん)したことについて、「首相にとっては『予定通り消費税増税』以外の道を閉ざす『脅し』である」と断じた。しかも、黒田発言は国債暴落の確率を大きく高めかねない重大な裏切り行為であることも指弾している。

 このとき、沈黙せざるをえなかった。あからさまに総裁を批判すれば、当時発足して間もない日銀の黒田・岩田体制の「内部不一致」だとメディアに叩かれることを恐れたという。

 消費税率10%についてもまた、メディアはまず増税ありきで、もっぱら軽減税率やポイント制の瑣末(さまつ)な論議にしか目を向けない。増税しなければ問題は解消するのにだ。 (産経新聞特別記者・田村秀男)

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