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【定年後の居場所】“協調性”持つ会社員のジレンマ… 「空気を読む」→「主体的に動く」への転換を!

 2年前に『定年後』を出版してから、マスコミの人たちの取材やインタビューを受ける機会が増えた。その中で、「定年後を充実して過ごすためのポイントを一言でお願いします」という質問を何度か受けたことがある。

 こちらは一言では言えないので、あれやこれやと考えているのだが、この問いかけを受けると頭の中で全体をまとめる作業を行うことになる。

 この質問に私は、「主体的になること」と答えている。私が小さいころ過ごした商店街のオジサンたちには当たり前のことかもしれないが、会社組織で長く働いている人にとっては、必ずしも簡単なことではない。

 主体的に行動するより、黙って上からの指示命令に従ったほうがうまくいくこともある。スムーズに社内を渡り歩くことができて評価を得られることも多いからだ。

 これらの態度をまさに一言で述べると、「お任せする」「空気を読む」の2つになる。「お任せする」ため、どうしても他人に物事を委ねることになり、主体的な立場にはなりにくい。また、「空気を読む」という姿勢は、そもそも受け身のスタンスである。

 以前、霞が関の官僚や大手企業の社員で構成する私的な会合で講演したことがある。その時、「皆さんも、上から個性を発揮しろとか、主体的に仕事を進めろとか言われても、本当にやってしまうとエライ目にあうでしょう」と話すと、想定をはるかに超える笑いが返ってきた。自分が働いている役所や会社の枠組みがいかに堅固なものであるかを意識しておくことも大切だと付け加えた。

 定年後に関することで言えば、こういうこともあった。私と同じレンタルオフィスに在籍しているコンサルタントと一緒に会合に出席したのだが、その時に会社員のある参加者が「定年後に自分がやるべきことを見つけなければならない」と発言したのを聞いて、彼は飛び上がるほど驚いた。自分で何をするのかが分からない人を初めて見たからだ。

 定年後になれば、会社からの指示や命令はなくなる。自分が動かなければ周囲の世界は何も展開しないことに気づく人は少なくない。会社中心の働き方を続けてきた人は、この定年前後のギャップに悩むといってもいいかもしれない。

 会社という共同体から離れた時には、自分なりに働く意味や生活する意味を見いだすことが求められる。ところが主体性をもたない状態では、人生や生活に意味を見いだすことはできない。会社員とフリーランスを10年間並行してやってきた私からみても、やはり会社員は周囲のことに気を使うあまり主体性を発揮しないことが特徴だと痛感している。

 そう考えてくると、「会社の仕事中心で働いてきた人は、定年後どうすれば主体的になれるのですか? 一言で言ってください」という質問が来そうだ。その時は、「自分が『いい顔』になれることをすれば良いのです」と答えることにしている。この『いい顔』は一言で説明するのは難しいので別の機会に述べてみたい。

 ■楠木新(くすのき・あらた) 1979年、京都大学法学部卒業後、生命保険会社に入社。50歳から勤務と並行して取材、執筆に取り組む。2015年3月、定年退職。現在、神戸松蔭女子学院大学教授。人事・キャリアコンサルタント。25万部を超えるベストセラーになった『定年後』(中公新書)など著書多数。19年2月に『会社に使われる人 会社を使う人』(角川新書)を出版。

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