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中国のコロナ危機対策がしょぼい理由 財政・金融の拡大はしたいけど…

 安倍晋三政権は国民1人当たり10万円の現金を給付するため、急きょ補正予算案を組み替えた。米国ではトランプ政権が2兆ドル規模の超大型財政出動に踏み切った。ドイツも緊縮財政棚上げだ。

 そこで、新型コロナの元凶、中国はどんな緊急策をとったのか、調べてみると驚いた。実にしょぼいのだ。

 4月8日付の日本総研リポートによれば、「中国政府はリーマン・ショック時のような銀行融資や公共投資の急拡大に対して慎重姿勢」という。めぼしいのは社会保障費減免と減税合わせて0・4兆元(日本円換算で約6兆円)で、2008年9月のリーマン・ショック後の4兆元(約60兆円)の財政出動の10分の1である。あとは中小企業向けなど、金融を中心とした支援策を小出しにしている。

 20日には中国人民銀行が2月に続き利下げしたが小幅である。中小企業などの利払い負担を軽減する狙いだというが、政策金利は3・85%と水準は高い。明らかに腰が引けている。金融危機にさいなまれているのだ。

 グラフは、人民銀行資金発行残高と外貨資産の前年同期比増減率と、人民元発行残高に対する外貨資産の比率の推移である。なぜ、この数値に注目するかというと、人民銀行は外貨資産に合わせて人民元を発行する独特の通貨・金融制度を堅持しているからだ。人民銀行は外貨、すなわちドルを市中銀行から買い上げて通貨発行する。平たく言えば、人民元という毛沢東の肖像一点張りのお札は、ジョージ・ワシントンやエイブラハム・リンカーン肖像のドル札に裏付けされている。そうでないと、中国の人々は人民元札を紙切れとしかみなさない。

 カリスマ毛沢東でも信用十分ではないかもしれないと歴代の共産党トップが判断したのかどうかは知るよしもないが、ともかく現実主義なのだ。

 追加供給される人民元は国有商業銀行などの金融機関経由で企業や家計に貸し出されるという具合である。日米欧の場合は、中央銀行が民間金融機関から国債などの証券を買い上げて資金供給するのとは大違いだ。

 グラフが示すように、リーマン・ショック当時は、外貨資産が人民元発行残高の1・2倍以上もあった。リーマン後、人民銀行はふんだんにある外貨を裏付けにして人民元を大量発行する大々的な金融緩和策を実施した。銀行の新規融資はそれまでの2~3倍も増えた。中国経済は2ケタ台の高度成長軌道に乗り、リーマン後の世界経済を牽引(けんいん)した。

 ところが、15年からは外貨資産比率が100%台を割り、最近は70%前後で推移している。資本逃避が急増しているため、外貨資産を増やせない。コロナ・ショックで主力外貨収入源の輸出は急減している。

 他方で、財政・金融の拡大はしたいが、ドルの裏付けなしでお札を大量発行したら悪性インフレになる。共産党政権が危うくなると、習政権は恐れているのだろう。(産経新聞特別記者・田村秀男)

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