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【秘録 今明かす「あの時」】『岸壁の母』と交換のスクープ写真、歌詞カード渡し「病室の窓10センチ開けて」 (2/2ページ)

 「しめた!」。私はその日、病院に連れてきた後輩記者の百瀬晴男くんに「急いで会社の資料室に電話して、『岸壁の母』の歌詞を書き取ってくれ」と命じた。

 達筆の彼は、歌詞をきれいに便箋にメモした。私は、それを専務に渡すときに「5分でいいので社長の病室の窓を10センチほど開けてほしい」と懇願した。

 「交換条件だな。よ~し、いいだろう」と渋々の承諾だ。わが社のカメラマンが撮影したスクープ写真は、裕次郎さんが点滴のついた右腕で歌詞を持って、♪母はきまし~た…?-という構図である。次いで屋上で散歩する裕次郎さんの写真もスクープできるなど幸運が続く中、入院46日目に裕次郎さんは退院した。

 数週間後に「西部警察」の全国キャラバンロケが決まり、裕次郎さんは東京都調布市の石原プロからロケ隊を手を振って見送った。

 囲みインタビューの後、裕次郎さんは私の腕時計を見て、「おや? 俺のと一緒だな」と話しかけてきた。歌手の三橋美智也さんから、会社の先輩の小西良太郎さん、そして私と流れてきた古い時計はロレックスGMTマスター。裕次郎さんが「太陽にほえろ!」で愛用していたものと同じだった。

 これが縁で、私は裕次郎さんから「中野ちゃん」と名前で呼ばれるようになった。しかし、以降、彼は一度もGMTは腕に付けなくなった。小林専務に理由を聞いた。「スターは人と同じオシャレはしないんだよ。プライドだよ、見栄だよ」と言って笑った。(中野信行)

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