zakzak

記事詳細

「舞台俳優」と「薬物」は相性が悪い その理由は…

 「次の“薬物犯罪大捕物”は人気タレントXか!?」といったスキャンダラスなキャッチが芸能三面記事をにぎわす光景は今や見慣れたものだ。

 しかし有名人の薬物犯罪が、これほどに人々の興味をひくのはなぜだろうか。

 つい最近、1980、90年代に世界的なブームを巻き起こした、超有名ヘビーメタルバンドの伝記的映画を見た。

 ワイルドな時代のアメリカが舞台で、実際にそのメンバーたちは、アルコールや薬物依存で苦しんだ時期もあり、そこからの復活劇も映画の重要なパートだった。

 彼らは個人的なトラブルから解散寸前にまで陥るのだが、最後に残っていたわずかな友情を頼りに再結成するという、感動物語だった。

 映画を見て思ったのは、日本、欧米ともに薬物依存や薬物犯罪を忌み嫌う感覚は同じだが、そこに陥った個人に対する見方は大きく違うということだ。

 映画を見ている限りであるが、欧米は薬物依存に陥った有名人の意志の弱さよりも、そこから復活した意志の強さをたたえる傾向があると感じた。

 だが、日本というものは、「しきたり」を破った者の存在そのものを社会から排除しようとする。復活に対する称賛などほとんどない。まさに社会文化的な背景の違いを痛感した。

 私自身も、共演した俳優やタレントが、その後に逮捕されて驚いたことが何度かある。彼らが現場で粗暴であったり、不可思議な言動をすることなどはなく、皆さん「いい人柄」であった。

 だが1つだけ共通することがある。それらは彼らの主戦場である仕事のジャンルが、テレビや音楽的なものばかりで、舞台の芝居に深く関わっている者は1人もいなかったということだ。

 私自身が「新宿梁山泊」という劇団に関わっているがゆえ、劇団や舞台演劇のリアルな現場をある程度理解している。

 その上で言えるのは、映像系と舞台芝居の一番の違いは、役者自身が芝居に関わる時間が、稽古や、本公演の回数を含めて、舞台のほうが何百倍も多いということだ。

 稽古のシステムとしても、基本的に他の俳優の稽古も見学する必要がある。

 2時間公演の舞台に対して、稽古と公演期間も含めて2カ月間程度、毎日朝から晩まで生活のすべてを舞台に「ささげる」必要があるのだ。

 だが2時間の映画を撮影するのに、撮影期間2カ月という話は多々あるが、その2カ月間、毎日朝から晩まで撮影をしているわけではない。

 また舞台とは違い、長いセリフをすべて覚える必要はなく、他の俳優が撮影している現場に立ち会うこともない。

 つまり、舞台の芝居というのは、想像を絶する「面倒」な作業で、さらに大して稼ぎにもならず、舞台が何よりも好きでないとやっていられないのである。

 薬物などに耽溺(たんでき)してしまうと、「酩酊(めいてい)」だけではなく、「二日酔い」のような修復時間が必要で、長いせりふを毎日覚えたり、毎日繰り返される稽古に参加し続けたりするのは不可能だ。

 薬物が何より好きな者が、そんな「修行僧」のような日々を好むはずはないだろう。

 ■大鶴義丹(おおつる・ぎたん) 1968年4月24日生まれ、東京都出身。俳優、小説家、映画監督。88年、映画『首都高速トライアル』で俳優デビュー。90年には『スプラッシュ』で第14回すばる文学賞を受賞し小説家デビュー。主な出演番組は『アウト×デラックス』(フジテレビ系)など。

関連ニュース

アクセスランキング