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エロ本求め、遠くの町へ… 近所の本屋で「あんた、中学生やろ」

 『遠くへ行きたい』を歌っていたのはジェリー藤尾。世代的にはギリなのだが、同タイトルのテレビ番組がしばらく続いていたので、僕はそっちの挿入歌として記憶している。

 今でも芸能人による旅番組はよく目にするが、『遠くへ行きたい』はあんな陽気なものでなく、ラスト、夕暮れが迫る日本海などを背にとても哀愁のある旅を演出してた。

 中学1年生だった僕は、その番組を見るにつけ、いつか自分も遠くへ行ってみたいと思いを馳せていたのだが、大した冒険心もなく、さびしがり屋だったのでそれは単なる憧れに過ぎなかった。

 ある日、いつものように近所の本屋に立ち寄り、こっそりエロ本を立ち読みしていたところ「あんた、中学生やろ、そんな本、見てたらアカンで」と、店のオバサンから注意を受けた。「いや、僕は何も…」、しどろもどろになって店を飛び出したのだが、近所故、僕の素性はバレている。再び、見つかったら最後、親に通報される危ぶまれもあって、その本屋には以降、行けなくなってしまった。

 しかし、若いころのエロネタ渇望はハンパなく、居ても立ってもいられない。

 “見たい…出来れば買って、じっくり見たい…”、そのことばかりで頭いっぱい。当然、勉強なんて手がつかず、その2日後、遠くへ行こうと決意した。

 歩きだと知れている。そこは買って貰ったばかりの電子フラッシャー付き自転車だ。部屋で制服からふだん着に着替え、僕は出来る限り素性がバレない遠くの町へ、エロ本を買う気満々で出掛けた。その間、何軒も本屋を見つけたが、“まだだ、もうちょっと遠くだ”と、ペダルをこいだ。

 店の奥を覗くと、理想的なお婆さんが店番を任されている風な店を発見。そこで心臓バクバクいわせながら入手したエロ本がコレ(写真)。遠くに行き過ぎて、不安な夜道をひたすら走った哀愁旅の思い出の一冊なのである。

 ■みうら・じゅん 1958年2月、京都市生まれ。イラストレーター、漫画家。エッセイストとしても知られ、97年に「マイブーム」で新語・流行語大賞を受賞した。近著に『ラブノーマル白書』(文春文庫)、『みうらじゅんの松本清張ファンブック「清張地獄八景」』(文芸春秋)など。62歳の誕生日を記念した楽曲『男キッス』を配信中。

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