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『キズナ』の歌詞書き終えたときに「ああ、俺はもう本当にからっぽなんだな」と

 1999年から2000年にかけて、相川七瀬のほかに3バンドのプロデュース、さらに知念里奈さん、高橋克典さんのプロデュース、島谷ひとみさん、深田恭子さんらへの楽曲提供、そして自分が組んだバンド「DON’T LOOK BACK」のレコーディングと、ずっとスタジオで作業していた気がします。

 そして、以前書いたように、とにかく毎日スタジオ作業が終わると意識がなくなるまで酒を飲むのです。東京は素晴らしいというか恐ろしいというか、作業が終わるのは大体いつも朝の5時頃なのですが、それからでも飲みに行ける店が結構あります。

 そして朝の9時頃にまた別の店に移って昼過ぎまで飲んで、数時間寝て仕事に向かう…なんて時はまだましなほうで、直接スタジオに行って、そのまま吐きながら仕事をしたりしていました。

 もともとあまり寝なくても大丈夫な体質でしたが、さすがにこれはもうむちゃくちゃです。それでも、とにかくシラフになるとネガティブなイメージばかりが噴出してくるし、いつも脳内で冷や汗が出ているような感覚で、とにかくすべてがつらくてしようがないのです。

 実は当時、あまりにつらいので鬱病の薬を入手して飲んでみたこともありました。確かに少し楽にはなったのですが、何やら不自然な感覚が消えなくて、結局やめてしまいました。酔いが回っている間だけは感覚が鈍麻して楽になれるので、シラフに戻ると早く酒が飲みたくて仕方がないといった状態でした。

 そんな生活を数年続けた2000年頃には、明らかに体が悲鳴を上げている自覚はありました。毎日水みたいな便しか出ないし、内臓が腐ってきてるような感覚があったのです。

 その頃、シンガーとしての私に、ドラマ『サラリーマン金太郎2』の主題歌の話があり、作ったのが『キズナ』という歌でした。

 “青い季節もう通り過ぎた後で いきがっていた夢も 不器用な涙も風に流れて 遠い夏の日の僕らはいつも 見知らぬ空へと 虹を渡る時を夢見ていた 絶え間なく流れる時よ すべて幻だと囁くけど もう一度信じてみたいんだ 色褪せないものだってあると 確かなキズナひとつあれば それだけで僕は生きてゆける”

 この歌詞を〆切ギリギリに書き終えたとき、「ああ、俺はもう本当にからっぽなんだ。自分の中に夢も希望も何ひとつなくなってるんだな」と気づきました。

 そして、一度しっかり休もうと思い、2000年夏、スペイン、ギリシャをゆっくり回ってくることにしたのです。

 ■織田哲郎(おだ・てつろう) シンガーソングライター、作曲家、プロデューサー。1958年3月11日生まれ。東京都出身。79年のデビュー当初からCMやアーティストの音楽制作に携わる。TUBEの『シーズン・イン・ザ・サン』で作曲家として注目される。現在「オダテツ3分トーキング」をYouTubeで配信中(毎週土曜日更新)。

 5月2日(土)には横浜のモーション・ブルー・ヨコハマで「Acoustic Night」を開催する。詳しくは公式サイトt-oda.jpへ。

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