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残虐シーンと復讐の果てにある誇り 映画「ナイチンゲール」

 あまりに残虐なシーンの連続にベネチア映画祭では審査員特別賞など2冠に輝きながら、評価が分かれた映画「ナイチンゲール」(公開中)。植民地時代のオーストラリアで英国が犯した数々の暴力を包み隠さず白日の下にさらした復讐劇だ。

 英国人が先住民族アボリジニから土地を奪った19世紀のタスマニア島。傍若無人に振る舞う英国軍将校のホーキンス(サム・クラフリン)は、アイルランド人の女囚クレア(アイスリング・フランシオシ)を見そめて囲う。クレアの清冽な歌声は、ナイチンゲール(夜泣きうぐいす)にたとえられていた。

 クレアの夫は、妻が刑期を終えても拘束されることへの不満をぶちまける。逆上したホーキンスは夫の目の前でクレアをレイプし、夫と子どもを殺してしまう。

 上官から能力を疑われていたホーキンスは、昇進を大佐に直訴するため島の密林を横断して町へ急ぐ。その後を馬で追うのは、人間の尊厳と家族を奪われて復讐に燃えるクレアだった。

 クレアは、道中の案内人としてアボリジニの黒人青年ビリーを雇う。今では山と緑に恵まれ、動物の宝庫として知られるタスマニアだが、先住民の恨みと白人の暴力に満ちた血なまぐさい道中となる。山道を越え、川を渡って、人種や性の差別にさらされた2人は、互いの偏見を超えて人間として理解し合う。共通の敵にどう立ち向かうか。アイルランド人とアボリジニの誇りがリンクするラストが象徴的である。(中本裕己)

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