zakzak

記事詳細

男にとっての“例の”籐の椅子と同じ 「アラン・ドロンが座った椅子」

 京都・立命館大学の衣笠学舎近くだったと記憶するが、『ピエール』って喫茶店があって、その店内に“アラン・ドロンが座った椅子”と一脚、書かれたものを見た。

 たぶん、アラン・ドロンの全盛期、来日した際、こちらのコーディネーターに連れて行かれたのであろう。

 僕は彼の代表作『太陽がいっぱい』はもちろんのこと、リアルタイムな『レッド・サン』や、『燃えつきた納屋』などちょっと渋いものまで映画館で観ていたが、当時の女性ファンのように“キャーッ!どうしてもその椅子に座りたい!!”とまでは思わなかった。

 でも、何の変哲もない、よくある喫茶店の椅子だけど、アラン・ドロンのお尻がひとときでもそこにあったと想像するだけで、とても興奮するファンの気持ちは十分、理解出来た。

 それは男にとっての例の籐(ラタン)の椅子と同じであろうからだ。

 “例の”と、いうのはこの場合、当然、みなさんお分かりのように“エマニエル夫人が座った”または、座っているのに似てる籐で編んだ椅子のことである。

 似てる椅子まで含まれるのは、少し誤解があるからだ。シルビア・クリスタル主演(元祖)の映画にはポスターにこそ出てくるが、劇中にはその椅子は登場しない。ポスターにあるものも、後に“エマニエル椅子”と呼ばれるようになった背もたれの上が大きな楕円形のものとは違う。ま、言うなればアラン・ドロンの座ったものと同様、何の変哲もない籐椅子なのである。

 それがいつの間にか膨れ上がってしまったのは、エマニエル夫人が座るなら自らがその椅子に成りたいと願うファンの気持ちの高ぶりであろう。

 あれから随分、時が流れたのに今でも例の籐椅子を目にすると無性に股間がジンジンしてきて-今回の写真は信州のとあるホテルで思わず座ってポーズを決める僕(当時、60歳)

 ■みうら・じゅん 1958年2月、京都市生まれ。イラストレーター、漫画家。エッセイストとしても知られ、97年に「マイブーム」で新語・流行語大賞を受賞した。近著に『ラブノーマル白書』(文春文庫)、『みうらじゅんの松本清張ファンブック「清張地獄八景」』(文芸春秋)など。新刊『ひみつのダイアリー』(文春文庫)が発売中。

関連ニュース

アクセスランキング