【織田哲郎 あれからこれから Vol.85】戸惑いながらの「劇伴」初体験 音楽的に自由で最高に面白い! - zakzak:夕刊フジ公式サイト

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戸惑いながらの「劇伴」初体験 音楽的に自由で最高に面白い!

 アニメ『装甲騎兵ボトムズ』が1983年からテレビシリーズとして放映され、歌手・TETSUとして主題歌「炎のさだめ」を歌いましたが、2011年に新しくOVA『装甲騎兵ボトムズ孤影再び』をリリースするにあたり、主題歌を歌い直してほしいという依頼をいただきました。

 「炎のさだめ」を作編曲されていた乾裕樹さんはすでに亡くなられていたので、OVA作品では私が編曲をすることになりました。

 とはいえ、昔からのボトムズファンの方々にはまったく違うものになってしまうとがっかりされると思い、もともとのオケにあった印象的なブラスの音などはそのまま使わせてもらいました。そして乾さんが劇伴の音楽も担当されていたので、OVAの劇伴(伴奏音楽)も作ってみないかというご提案をいただいたのです。

 それまでインストゥルメンタルの曲を作ったことはあっても劇伴は初めてだったので、最初はいろいろと戸惑いましたが、やり始めてみると、これが最高に面白いのです。歌もののポップスの場合、あくまで歌を聴かせるための伴奏ですから、あまりにもおどろおどろしい音楽、気味の悪い音楽、あるいはやたらとファニーな音楽などはまず出番がありません。

 楽器の編成も大体決まっているので、低音だけとか高音だけみたいなものはまずないです。そしてポップスもロックもメジャーなものは大抵4分の4拍子か4分の3拍子です。ですが劇伴の場合、その場面場面をより生かすためであれば、どんな音楽でも許されるのです。

 子供の頃から映画音楽が好きだったこともあるかもしれませんが、劇伴作りに熱中していると、なんだかロックやポップスの世界がやけに制約の多い、狭い世界に感じてしまい、劇伴はなんて広々とした場所で音楽を作れるんだ! 最高だぁ! と感じたものです(とはいえ、ポップスの世界に戻ってくると、やっぱり歌詞と歌のある音楽っていいなぁと思うのですが)。

 これに味をしめて、それ以来、劇伴の仕事は依頼されればなるべく受けるようになりました。12年には『武装神姫』というアニメのオープニングと劇伴を作り、13年には『ムシブギョー』というアニメの劇伴を担当しました。

 そして今年、コロナ禍でライブもなくなった時期に、来年春から放送する予定のアニメの劇伴をずっとスタジオにこもって作っていました。

 アニメの音楽と関わってきた人はたくさんいると思いますが、主題歌を歌手として歌ったこと、主題歌の作曲編曲だけを担当したこと、そして劇伴だけを担当したこと、これらをすべて別々に経験したことがある人は、もしかしたら私くらいかもしれません。

 音楽家としてなかなかに面白い経験をしてきたなぁと思います。

 ■織田哲郎(おだ・てつろう) シンガーソングライター、作曲家、プロデューサー。1958年3月11日生まれ。東京都出身。79年のデビュー当初からCMやアーティストの音楽制作に携わる。現在「オダテツ3分トーキング」をYouTubeで配信中(毎週土曜日更新)。

 『織田哲郎 LIVE TOUR 2020~一寸先はYummy!』は、10月24日(土)=名古屋「ReNY limited」▽25日(日)=大阪「BIG CAT」▽11月6日(金)=東京「EX THEATER ROPPONGI」で開催。9月26日から一般発売開始(プレイガイド先行あり)。詳しくは公式サイトt-oda.jpへ

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