【映画三昧の独り言】第4回「風と共に去りぬ」 すべての人を輝かせた「助演女優」デ・ハヴィランドさん - zakzak:夕刊フジ公式サイト

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【映画三昧の独り言】第4回「風と共に去りぬ」 すべての人を輝かせた「助演女優」デ・ハヴィランドさん

 今夏の7月26日、女優のオリヴィア・デ・ハヴィランドさんが104歳で亡くなりました。2度もアカデミー主演女優賞を獲得したデ・ハヴィランドさんですが、やはり強い印象を残した作品は「風と共に去りぬ」(1939年、ヴィクター・フレミング監督)のメラニー役です。

 清楚でしっかり者のメラニー無くしてヴィヴィアン・リー演じるスカーレット・オハラの自由奔放な魅力は活かされなかったでしょう。貞淑で誰にでも優しいだけでなく、したたかさ(スカーレットが殺した北軍兵士の財布を盗むよう唆=そそのか=したり、夫を救うために北軍憲兵に堂々と嘘をついたり)も秘めた人間的魅力あふれる女性としてメラニーを演じたデ・ハヴィランドさんの演技はまさに助演女優賞ものでした(実際の助演女優賞は黒人メイドのマミーを演じたハティ・マクダニエルさん)。

 今年の5月、黒人男性が白人警官に暴行され死亡しました。この事件を機に「ブラック・ライブズ・マター」運動が全米で広がる中、名画「風と共に去りぬ」は、黒人差別の象徴のように扱われ、一部の動画配信サービスでは一時配信停止の憂き目に遭いました。

 確かに、奴隷制度を守ろうとした、南北戦争前後の南部支配層社会が舞台ですから、黒人は奴隷として描かれ、今から見れば差別的な表現や描写が数多く見られます。けれども、あの時代を生きたスカーレットとメラニーを巡る人々の物語を映画として描くには欠かせないものだったとも思います。言うまでもなく、差別は許されるものではありません。が、そのことと、この映画を否定することとは、まったく別の話ではないでしょうか。

 時代背景を表した映画の劇中には、人種差別も女性蔑視も性的マイノリティーを茶化すことも、それはその時代のリアルなのであり、物語には欠かせない描写、セリフです。もちろん、差別や蔑視を目的とした作品であれば、どの時代、どんな世界を描こうと批判されてしかるべきです。しかし、そうした意図のない作品の、必要とされる表現を制限することは、自由を損ない、差別の歴史を糊塗(こと)する事態を招くのではないでしょうか。黒人を含め全ての人に優しく愛情を注ぐメラニーを演じたデ・ハヴィランドさん。彼女は「風と共に去りぬ」が差別を助長していると指摘されたことを今、天国でどう受け止めているでしょう。

 今回、デ・ハヴィランドさんの訃報に接して初めて知った事実があります。彼女がハリウッドの映画会社ワーナー・ブラザース相手に訴訟を起こしたことです。

 かつてハリウッド俳優は映画会社と長期間の契約を結んでいて、出演を拒否した場合、その期間分契約の延長を強いられていました。デ・ハヴィランドさんは、映画会社に有利なこの契約を違法として裁判で闘い、勝利します。それはハリウッド映画界で俳優の権利を広げる大きな一歩でした。その後2年間、デ・ハヴィランドさんは映画界から“干され”ました。しかし今でも、ハリウッドの俳優たちは、彼女を尊敬して止まないといいます。その芯の強い生き方は映画の中のメラニーそのものです。

 スカーレットだけでなく、ハリウッドのすべての俳優が輝くための「助演女優」ともなったデ・ハヴィランドさん。見事な生涯でした。

 ■國吉卓爾(くによし・たくじ) 1946年、高知県生まれ。高知県立追手前高等学校、徳島県立池田高等学校、国士舘高等学校、各中退。足摺石大(あしずり・いしだい)のペンネームで『はぐれ団塊作文集』『小田急線梅ヶ丘』(講談社ビジネスパートナーズ)他。また、高知を舞台にした映画「カスリコ」(2019年公開)のシナリオを手掛ける。日本シナリオ作家協会会員。

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