【坂上忍の白黒つけて何が悪い】3時間作品なのに丁寧で構成も秀逸 「ある画家の数奇な運命」 - zakzak:夕刊フジ公式サイト

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【坂上忍の白黒つけて何が悪い】3時間作品なのに丁寧で構成も秀逸 「ある画家の数奇な運命」

 なんと上映時間は3時間を超す大作である。

 わたしは基本、映画は長くても2時間以内。理想は100分と考えているのだが、そんなわたしが3時間を超す作品を紹介することになろうとは…。

 だって、とても丁寧に撮ってるんですもん。カメラワーク最高! 構成も秀逸。内容的に「3時間があっという間でした」とはいえない作品ですが、見応え十分といっていいでしょう。

 ナチ政権下のドイツに暮らすクルト少年は、叔母であるエリザベトの影響から絵に興味を持つようになります。

 しかし、叔母はガス室送りとなり、2人の兄も戦場で犠牲となってしまいます。

 後にドイツは降伏し、西と東に分かれることに。

 成長したクルトは美術学校で知り合ったエリーと恋に落ち、西ドイツへ逃げることに…。

 とまぁ、時代背景はみなさんもご存じかと思いますが、どんな困難に見舞われようとも、描くことをやめなかったクルトの生き方が克明に描かれているのです。

 大げさな表現はひとつもなく、淡々と、静かに、繊細に…。

 その空気感がたまらなく居心地がいいんですよね。逆に心に響いてくる。

 クルトの絵を見て、美術学校の教授がこんな言葉を残すんです。

 「君は誰だ? これは君じゃない」と。

 これって、誰しもが抱える永遠のテーマとでもいいましょうか。要するに自分探しですよね。

 わたしも30代の頃は、毎夜自分に問いかけておりました。

 「お前は誰だ? お前は何がしたいんだ?」と。

 ただ、いくら問いかけても答えらしきモノは見つからない。そうだ、ジッとしていたって駄目だ。とにかくやりたいことを全部試してみよう。動いてみよう!

 けっこう長いこと探し続けましたね。数え切れないほど試したな~。

 ところが、あるときに気づくんです。

 「もしかしたら、これって一生かかっても答えにたどり着かないのかもしれないな」と。

 試すこと、探すことは無駄ではないはずだが、無理に答えを見つけようとすることは、いったんやめておこう。

 ぶっちゃけ、わたしの場合はそんなこんなを経ての『今』なんです。

 一方、絵を通して自分探しを始めたクルトは、終盤にひとつの答えにたどり着きます。

 そしてそれらの絵が評価され、名声を得てゆくわけです。

 ただ、クルトがそこまでうれしそうじゃないところに、わたしは共感を覚えました。妙にリアルに映ったんです。

 監督は『善き人のためのソナタ』でヨーロッパの映画賞を総なめにした、フロリアン・ヘンケル・フォン・ドナースマルク。

 そして今回は、初めてカメラマンを紹介させていただきます。キャレブ・デシャネルさんなんですが、わたし大ファンなんですよ。いや、大大大ファンなんです!

 中学生の時、ピーター・セラーズ主演の『チャンス』という作品を見て以来、追いかけ続けているカメラマンさんなんですが、この方のカメラワークはもはや演出に等しいレベルなんです。

 すべてのカットに意味があると言っても過言ではありません。

 デシャネルさんの映像美を見るだけでも、価値はあるとおもいますよ。

 10月2日公開。

 ■坂上忍(さかがみ・しのぶ) 1967年6月1日、東京都生まれ。俳優、タレント、映画監督、演出家などマルチに活躍。3歳から劇団に所属。多くのドラマに出演し“天才子役”と呼ばれた。

 『バイキング』『ダウンタウンなう』(フジテレビ系)、『有吉ゼミ』(日本テレビ系)、『坂上&指原のつぶれない店』(TBS系)などレギュラー多数。

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