【ぴいぷる】俳優・上西雄大 「自分が主演するために」書いた脚本でつかんだ“奇跡” 幼児虐待の実態に衝撃…一晩で書き上げ映画関係者を驚かせた主演兼監督デビュー作「ひとくず」 - zakzak:夕刊フジ公式サイト

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【ぴいぷる】俳優・上西雄大 「自分が主演するために」書いた脚本でつかんだ“奇跡” 幼児虐待の実態に衝撃…一晩で書き上げ映画関係者を驚かせた主演兼監督デビュー作「ひとくず」

 「自分が主演するために」と、脚本を書いた1本の映画が人生を変えつつある。世界から絶賛され、これまで撮りためていた監督作5本が相次いで今年の公開待機作になるという“奇跡”をつかんだ。

 「まるで自ら脚本を書いた『ロッキー』でスターとなった米俳優、シルベスター・スタローンのようですね?」と聞いたら、笑いながらこう答えた。

 「スタローンは3日間でロッキーの脚本を書いていますが、私は1日ですよ」

 たった一晩で書いたという劇場長編の主演兼監督デビュー作「ひとくず」が現在、上映中。

 幼児虐待をテーマにしたこの重厚な社会派映画は、ニース、ロンドン、ミラノ…と数々の国際映画祭で最優秀作品賞や監督賞、主演男優賞などを受賞し、日本の映画関係者を驚かせた。

 企画から主演、監督、脚本、編集、プロデューサーまですべてこなし、製作費も自分で工面した。

 「なぜ1人で5役も? 大阪の俳優がオリジナル脚本の主演映画を、東京ではなく大阪で撮るためにはこれぐらいしないと」と苦笑した。

 大阪に生まれ、物心ついた頃から、祖母に連れられ、映画館へ通い詰めた。

 「高倉健、松田優作、原田芳雄。自分もいつかあんな俳優になりたい」。銀幕のスターに憧れを抱き、演技の世界に魅了された少年は大阪で劇団を立ち上げる。その一方で、高視聴率のドラマなど話題作に出演するが、「なかなか主演のチャンスがめぐってこなくて」と振り返る。

 沢口靖子主演のドラマ「科捜研の女」シリーズでは“常連”だが、「そうは言っても、犯人役、殺される役、死体の発見者役など。ミステリードラマで考え得る一通りの役で」と笑ってみせた。

 転機は約4年前に訪れた。

 「構想を温めていた映画の脚本を書くため、精神科医に話を聞きに行ったんです」

 そこで偶然、医師が教えてくれた幼児虐待の実態に衝撃を受けた。

 「虐待は許せないが、本当は虐待する側も傷ついている。この連鎖を断ち切るために、役者として何かやらなければ…」

 強い衝動に突き動かされ、夜を徹し書き上げたのが「ひとくず」の脚本だった。

 「ベストセラー小説や人気漫画が原作ではない、地味なオリジナル脚本の映画化は困難」と覚悟し、最少人数のキャスト、スタッフで、自宅などを利用し、オール大阪ロケで撮影を敢行した。

 執念の結晶と呼べる一作は映画祭関係者だけでなく、多くの俳優の心を揺さぶった。

 次に撮った作品もすでに話題になっている。

 元プロボクサーの俳優、赤井英和とW主演した「ねばぎば新世界」。昨年のニース国際映画祭で外国語長編映画部門最優秀作品賞を受賞した注目の1本で、大阪・天王寺を舞台に繰り広げる痛快任侠アクションだ。

 「天王寺は祖母に連れられ通い続けた劇場があり、原点のような場所。ここで尊敬する赤井さんと共演できて光栄です」と謙虚に語る。

 これにとどまらず、公開を控える監督作は、後4本も。

 なかでもミステリー「西成ゴローの四億円」は重鎮俳優の奥田瑛二、ヒューマンドラマ「ふたたヴィラ」は大御所女優、松原智恵子との共演作。先の赤井をはじめ、奥田、松原も「ひとくず」を見て、出演依頼を快諾してくれたという。

 数年前、大阪最北端の能勢町に、古いが広い民家を借りた。

 「片田舎ですが、衣装や小道具などがすべて保管できるんですよ」

 この“質素な大阪の拠点”から世界へ映画を発信し続ける。(ペン・波多野康雅 カメラ・南雲都)

 ■上西雄大(うえにし・ゆうだい) 俳優、監督、脚本家。1964年9月13日生まれ。56歳。大阪府出身。府立箕面東高校卒業。舞台、ドラマ俳優を続けながら2012年、劇団「10ANTS」を創設し、自主興行「シアターアンツ」を開催。主な出演作はNHK連続テレビ小説「純と愛」(12年)、映画「太秦ライムライト」(14年)など。現在、主演兼監督作「ひとくず」が公開中。赤井英和とW主演した監督作「ねばぎば新世界」など数本が今年公開予定。

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