漫画家・ミュージシャン、久住昌之 お店選びは「己の勘のみを頼りにせよ」 夕刊フジ新連載「するりベント酒」スタート (1/2ページ) 久住昌之 するりベント酒
■「孤独のグルメ」原作者
ドラマ版が人気シリーズになっている『孤独のグルメ』の原作者で、グルメ漫画ブームの立役者。外食をこよなく愛するだけに、新型コロナウイルス禍で飲食業界が苦境に立つ現状には複雑な思いがある。
「僕が好きな年寄りがやっている店なんかは、まいっちゃっていますよ。やめてしまった人も多いそうです」
『孤独のグルメ』は1994年に漫画連載が始まり、俳優、松重豊主演のドラマ版は2012年からテレビ東京系でスタートした。松重演じる輸入雑貨商の主人公・井之頭五郎が仕事先で食堂などにふらりと立ち寄り、気になったメニューを次々と食べていくというストーリー。淡々とした演出ながら中年オヤジが食事時間をとことん楽しむ姿が評判を呼び、シーズン8まで放送されている。
「シーズン1を見返すと、松重さんも自分も若かったのが分かりますね」としみじみ。大食漢の主人公とは違い自身は小食だが、「スーパーヒーローを求めているということですね。ものすごいスポーツマンの話を書く人が、実は運動音痴だったり。自分にはできない大食いの主人公を描くのが楽しいんですよ」と明かす。
「ドラマが続くようになって、松重さんはお酒をピタリとやめたんです。毎晩お酒を飲んでいたら、あんなに食べられませんからね。役者魂があります」
コロナ禍で会食や宴会が忌避される中、作品同様、五郎のような1人外食を推奨している。
「冗談で言ってたんです。『GO TO ゴロー』でいいんじゃないかと。五郎のまねをして1人で食べるスタイルですね。頭の中で『何てプレッシャーをかけてくる店主なんだ』とかつぶやきながら、食事を楽しむ。ぜひ政府にも採用してもらいたいんですけどね」
自らも“勘”でのれんをくぐるスタイルだ。外食の際にグルメサイトをお店選びの参考にしている人も多いインターネット時代に、あえて「己の勘のみを頼りにせよ」と唱える。
「情報過多のグルメサイトだと書いてあるクチコミを読むだけで満足してしまいますからね。お店はいわば店主の国であって、自分は知らない国に来た、ただの旅行者。事前にガイドブックを読まないで外国に行くみたいな感覚ですね」
昨年12月には自己流店選びの実践録とも言える著書『面(ジャケ)食い』(光文社)を発表した。