黒木華のおとぼけ感が光る“ラフ&ホラー” 映画「先生、私の隣に座っていただけませんか?」 - zakzak:夕刊フジ公式サイト

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黒木華のおとぼけ感が光る“ラフ&ホラー” 映画「先生、私の隣に座っていただけませんか?」

 “ラフ&ホラー”。映画『先生、私の隣に座っていただけませんか?』(堀江貴大監督)をジャンル分けすると、そんな新たな区分けが思い浮かぶ。「笑えて怖い」。

 黒木華(31)演じる早川佐和子は売れっ子漫画家。柄本佑(34)が演じる夫の俊夫も漫画家だが、長い間自分の作品を発表していない。妻を支えるアシスタント的存在である。

 結婚5年目だがまずまずうまくいっている、と俊夫は思う。一方で、佐和子は見抜いていた。

 夫の不倫。

 佐和子の担当編集者の千佳を女優の奈緒(26)が演じる。屈託なく、明るく、夫婦の仕事場に訪れる。俊夫と不倫関係にあるが、佐和子への後ろめたさはゼロ。俊夫も千佳もばれるはずはないと思っているが、そこは妻の勘が上回る。

 そんな折、佐和子が新作のテーマを決める。「不倫」。ここからが映画は真骨頂である。ネームをこっそりと見てしまう俊夫。え、不倫に気づかれている! それだけでない。佐和子の不倫も描かれている。相手は自動車教習所のイケメン教官。焦る俊夫、無断外泊するなど大胆化する佐和子。ネームをノンフィクションと思い込む俊夫は教習所で張り込むなど行動を滑稽化させていく。本人は大真面目だから、滑稽さが深度を増す。

 心理戦を描く手法として劇中漫画はどんぴしゃり。漫画家の鳥飼茜さんの絵は非常に効果的だ。スリリングな心理戦が虚実ないまぜに進む。まさに“ラフ&ホラー”だ。

 主要出演者の人数がコンパクトである。前述した夫婦と担当編集者の他は、イケメン教官の金子大地(24)、佐和子の母の風吹ジュン(69)。これだけで、物語は成立している。

 とりわけ絶妙なのは、黒木と柄本が作り出す間。間がいいから、笑ってしまう。黒木の醸し出すおとぼけ感は、不倫する夫を責めるでもなく、かといって許すわけでもない微妙なさじ加減を、空気感として漂わせる。焦る柄本はまさに喜劇役者。コメディーセンスのある演技者をキャスティングできたところが、映画の成功のもとになっている。

 不倫を描くにあたって道徳的なこと、説教めいたことを一切排除した点も新しく、きっちりとさせないラストシーンも観客の想像をくすぐる。

 いいことずくめの映画である。公開は9月10日。秋の収穫である。

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