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漫才師・横山たかしさん 自称48億円!金ピカ「車いす姿」で届けた…明るい笑いと勇気

 人間の尊厳の基本は、移動・排泄(はいせつ)・食事だと考えます。3つの自由が利かなくなったとき、人は尊厳を奪われたと感じるのです。

 歩行が不自由になっても、移動の尊厳をかなえてくれる道具が車いす。しかし、車いすの人の社会参加という視点から見ると、日本は欧米に比べ、まだ発展途上国と言わざるを得ません。どこでもいつでも車いすで出かけられる国、誰もがじろじろ見たり偏見を持たず、助けが必要なときにはそっと手を差しのべられる国になるには、もう少し時間がかかりそうです。

 ですから、この人が金ピカの車いすで、テレビで漫才をしてくれたときはとても嬉しかった。

 ほら吹き漫才で知られる横山たかしさんが6月1日に大阪市内の病院で亡くなりました。享年70。死因は多臓器不全でした。

 関西以外にお住まいの方はピンとこないかもしれませんが、金ピカ衣装で赤いハンカチを口にくわえ、「すまんの~」のギャグ…と言えば、「ああ!」と思い出す人も多いのではないでしょうか。

 たかしさんは、2014年にヘルニアに伴う脊柱管狭窄(せきちゅうかんきょうさく)症を発症しました。脊柱管とは脊髄の神経が通るトンネルのようなところ。加齢とともに神経が圧迫されて、痛みや痺(しび)れが起こるのが脊柱管狭窄症。国内患者数は現在約350万人とも言われ、50代以上の腰痛の最大の原因と考えられています。

 薬やリハビリで対応しますが、歩行障害が進行した場合は外科手術が考慮されることがあります。たかしさんも手術を受けたようですが、徐々に症状は悪化。免疫力も落ちていたのでしょう、昨年1月に、今度は腸腰筋膿瘍(ちょうようきんのうよう)の手術を受けました。これは、骨盤周りの筋肉に細菌が入った結果、膿がたまる病気です。痛みや発熱、そして歩行困難などの症状が現れます。私の経験では、高齢者や糖尿病の患者さんに発症しやすいです。

 しかし、たかしさんはめげませんでした。安倍総理が手配してくれた純金の48億円車いす(自称!)で舞台に復帰しました。もちろん、自称38億円の金ピカ衣装も健在です。車いす姿をこれほど明るい笑いに変えた芸人さんは今までいなかったでしょう。どれだけの車いすの人が、救われたことか。

 「ほら吹き漫才は年をとってからのほうが面白くなると思っていた。2人が杖をつきながらシルバー世代のアイドルになりたかった」と、50年コンビを組んだ相方の横山ひろしさんは寂しそうです。

 来る大阪万博では、杖や車いす、認知症やがんの人など超高齢、疾病芸人が活躍する舞台を作ってほしい。高齢大国・日本のお笑いを世界に発信するチャンスです。

 ■長尾和宏(ながお・かずひろ) 医学博士。東京医大卒業後、大阪大第二内科入局。1995年、兵庫県尼崎市で長尾クリニックを開業。外来診療から在宅医療まで「人を診る」総合診療を目指す。近著「薬のやめどき」「痛くない死に方」はいずれもベストセラー。関西国際大学客員教授。

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