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【ガマンは禁物 慢性痛に克つ!!】日本の痛み治療は“ガラパゴス化”している!? 医師「欧米より20年は遅れている」

 痛みを慢性化させない、病気にしないために気をつけたいことの1つが手術。お笑いトリオ、ネプチューンの名倉潤さん(50)も、頸椎椎間板ヘルニアの手術後の侵襲(しんしゅう=ダメージ)によって、うつ病を発症したと発表している。術後の痛みは多くの人が抱える問題だ。

 横浜市立大学附属市民総合医療センター・ペインクリニックの北原雅樹診療教授によると、鼠径ヘルニアや虫垂炎(盲腸)の手術後に痛みが残る割合は、5%ほど。日帰り手術も可能で、比較的簡単と言われる手術でもこのくらいの割合だ。

 「日本の医療は、悪いところを治すまでで終わりですが、欧米では社会復帰させるまでが治療のゴール。手術が本当に必要かどうかの検討から、必要ならどうやって術後の痛みや苦しさをケアして、社会復帰できるようにするか。本来は医療がそこまで考えなければいけないのです」

 北原医師が現在最も危惧しているのは、乳がんの術後の痛み。年間8万人くらいの女性が乳がんになり、ほぼ全員が手術する。うち腋窩郭清(えきかかくせい=腋の下のリンパ節に転移があると切除。後遺症が多い)をする人が半分くらいとすると、4万人。その中で手術後に痛みを残す人が4~7割、少なく見積もって1万6000人が術後の痛みを抱える。

 こうした痛みは、異性の医師には伝えにくく、聞いても伝わりにくい。「ブラジャーが痛い、と訴えても、まずなぜ痛いかもわからず、じゃあ着けなければ? と言われてしまう。外出時に着けないわけにはいかない、というような事情は、男性医師には理解しにくい」(北原医師)

 こうした痛みを診る女性医師は、日本で10人程しかいないのも問題だ。

 がんの治療として緩和ケアが重要視されてきてはいるが、日本の痛み治療は欧米より20年は遅れていると北原医師は話す。日本の痛み治療がガラパゴス化する理由がある。一つは、医師の教育の問題。心理社会的な要因が軽視されているなど、知識が不足している。そして、医療制度の問題。痛みの予防、初期の治療には、生活習慣やストレス対応の指導などが大切。だが診療報酬の点数はつかないし、マンパワーにも限りがある。

 「一般の人も、専門知識は必要ありませんが、痛みを軽視してはいけないなど、基本的なことは知っておいていただきたいのです」

 ガラパゴス化する痛み治療の例を紹介しよう。ペインクリニックや痛みセンターという名前がついている診療科では「神経ブロック」という、痛みの信号が脳まで届かないように、神経の経路に注射をする治療法を行うことが多い。ところがこれは、20年は古いアプローチだという。

 「神経ブロックが必要で、奏功することももちろんあります。しかし、それ以外にも考えるべき介入法は山ほどあります」

 また、腰の痛みを訴えて整形外科に出向くと、骨の異常がないか調べるため、X線検査が行われることが多い。欧米では、とくにぎっくり腰のような急性の痛みで来院した場合は、まず撮影しないと北原医師。

 神経ブロックもX線も、大切な治療、検査だが、痛みが主訴の場合は「それは本当に必要なのか」という視点もまた重要だ。

 次回は痛みと薬について。(石井悦子)

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