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ガツンとくる味、目指すは世界! 大分県「兼八」

 大分県の酒といえば、麦焼酎。長くいいちこや二階堂の天下が続いた後、兼八(かねはち)が登場したときは度肝を抜かれた。

 いいちこは減圧蒸留とイオン交換で、わざと甲類焼酎のようなライトな酒質にし、大成功を収めた。かたや兼八は、常圧蒸留のヘビーな酒質。焦げ臭ギリギリの香ばしさは、その後の麦焼酎の新潮流を切り開いた。

 この焼酎をつくったのが、四ッ谷酒造(大分県宇佐市)の5代目、四ッ谷岳昭さんだ。仕事先のシンガポールで、いいちこを見かけ、「そういえばうちも焼酎屋だったな」。父からは、儲からないから家業は継ぐなと言われていたが、「自分の好きな焼酎をつくってみよう」と思い立ち、故郷に帰った。

 兼八の原型は、かつて父が作っていた。国産の裸麦を使った常圧蒸留の10年熟成。この酒を気に入っていた四ッ谷社長は、「15~16年前の技術でつくったものだから、今の技術でつくったら、もっと美味しくなるかもしれないよ?」と父を説き伏せ、2000年夏に新しい兼八を発売した。兼八は初代蔵元の名前なのだが、昔たくさん発注したラベルが余っていたため、それを流用。父から「やるならすべて売り切れ!」と言われていたので、はせがわ酒店などの有力酒販店に、20~30ケース強引に押し売りしたそうだ。

 知名度が上がったのは、2002年。NIKKEIプラス1で、麦焼酎で唯一、焼酎ベストテンに名を連ねたのだ。翌年からの焼酎ブームという追い風もあった。瓶詰めが間に合わないくらい死ぬほど働き、ブームを乗り切った。今は酒販店ごとの割当量を決め、計画生産・計画出荷で安定供給を達成している。

 今後は、麦焼酎の世界進出を目指しており、目下海外での啓蒙活動に余念がない。42度の兼八原酒は、ガツンとくるクセがたまらない逸品。アイラ系シングルモルトにも匹敵する味わいで、海外でも十分戦えると私は思う。3年前には大分県の焼酎好適麦トヨノホシを開発するなど、四ッ谷社長は麦焼酎界のリーダーとして、世界の市場を見据えている。 

 ■江口まゆみ 酔っぱライター。世界中の知られざる地酒を飲み歩き、国内でも日本酒、焼酎、ビール、ワイン、ウイスキーのつくり手を訪ねる旅を続ける。大人気のラブコメ漫画『酒と恋には酔って然るべき』(秋田書店)の原案を担当。

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