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発達障害の人と誤解なく接するには 岩波明氏『誤解だらけの発達障害』

 ここ数年で広く耳にするようになった「発達障害」。イメージだけが先行して、「実際にはよくわかっていない」という人もいるのではないだろうか。そのような人こそ読んでみたいのが『誤解だらけの発達障害』(宝島社新書)。著者で昭和大学医学部精神医学講座主任教授の岩波明氏は、発達障害について多くの著書を持ち、発達障害研究の第一人者ともいえる存在だ。

 「メディアには発達障害に関する情報があふれていますが、中には首をひねるようなものも。本書は、発達障害に関する事実だけを明らかにすることを目的としており、原因、症状、発達基準、治療法など現時点での最新情報が知ることができます」(編集を担当した宝島社の宮川亨さん)  発達障害には、アスペルガー症候群を中心とする自閉症スペクトラム障害(ASD)、不注意で落ち着きがないなどの症状がある注意欠陥多動性障害(ADHD)、限局性学習障害(LD)といったさまざまな疾患がある。

 ASDは、相手の心情を表情や言葉のニュアンスから察することが難しかったり、場の雰囲気を感じ取ることができないなどの症状で知られる。そのイメージが強いからなのか、「KYな人=ASD」だと決めつけるケースも多々見られる。しかし、指摘を受けて専門外来を受診するも、周囲の思い込みだったり、生まれつき内向的な性格というだけのこともあるそうだ。実は、ASDの診断には、対人関係の症状だけでなく、特定の物事に執着するといった「こだわりの症状」を伴う必要があるという。

 また、近年話題になっている「大人の発達障害」という言葉の印象から、「大人になってから急に発達障害になることがある」という誤解も広まっている。しかし、発達障害は生まれつきのものであり、子供時代に問題行動がなかったために見逃されていただけ。発達障害を疑う場合は専門の医療機関などに相談し、適切な治療を受けることが必要だという。

 読者諸氏の中には、発達障害を抱える部下への対応に苦慮している人もいるかもしれない。本書によれば、まず重要なのは、本人の特性をいかした部署に配置することだという。ASDのある人は、ルールに従って物事をコツコツこなすことが上手なので、経理や財務管理、システムエンジニアなどが向いているそうだ。

 一方、ADHDのある人は、フットワークが軽いので、営業職やソーシャルワーク、他にもデザイナーなどクリエーティブな仕事も適しているという。

 加えて、本人にとって仕事をしやすい環境を整えることも大事だ、としている。たとえば、指示は文書で出す、1日のスケジュールをはっきりさせる、大切な締め切りや約束の時間は前もって声をかけるなどだ。

 「面倒だな」と思うかもしれないが、トラブルを未然に防ぐことにつながり、本人の得意分野で力を発揮させれば、職場にとってもプラスになるだろう。

 自らの発達障害に悩む人はもとより、発達障害の家族や部下を持つ人にとっても参考になる1冊だ。(井田峰穂)

 ■発達障害の治療のポイント

 (1)医療機関を受診して正しい診断を受ける

 (2)本人ひとりひとりに適切な環境調整を行う

 (3)自分の特性について学び、得意不得意を知ることで学校や職場における適応を改善する

 (4)自分の得意な分野を生かして、苦手な部分をカバーし、問題となっていることに工夫や対策を考え実践する

 (5)薬による治療で、問題となる症状を改善する

 (6)認知行動療法や集団精神療法によって、生活場面における行動の仕方について学ぶ

 ※著書から抜粋

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