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【MCIリバーター 軽度認知障害回復奮闘記】デュアルタスクはうまくいかなくていいの? 違うことを一度にやるのがこんなに難しいとは

 買い物をしながら金額を暗算する。傘をさしながら信号機を見て横断歩道を渡る。日常生活でわれわれは意識しないでも、いくつかのことを同時に行っている。

 だが、年をとって認知力が怪しくなると並行して2つ以上のことをうまくこなすのが難しくなる。

 何を隠そう、この僕にとってはデイケアのプログラムで「シナプソロジー」というデュアルタスクがいちばんの鬼門である。同時に複数の負担をこなす訓練だ。

 例えばジャンケンで右手は相手に勝って左手は負けるものを出す(相手がグーなら、右手はパーで左手がチョキ)。最初はうまくいくが、だんだん早くなっていくと焦るわ、緊張するわで滅茶苦茶になる。

 トレーナーからは、「その失敗で頭が混乱するのがいいのです。適度な混乱は脳に刺激を与える。失敗するからトレーニングになるのです」と言うが、落ち込んだ僕にしてみれば、分かるようでよく分からない。

 ほかにこんな例も。両手にお手玉を持って同時に2つを50センチほど投げ上げて落ちてきたところをキャッチする。次は落ちてきた2つのお手玉を左右の手を交差してそれぞれキャッチ。それを何回か続けるのだが、僕は5回連続でミスをした。

 「その失敗がいい。笑って楽しくやりましょう」

 失敗して褒められるなんて何か変な感じだ。

 両手を合わせて指先をこまかく動かすのも認知力アップにつながると言い、デイケアでも取り入れている。指回しだ。これもデュアルタスクになる。例えば薬指と中指を同時にクルクル回す。どっこい至難の業だ。今でもうまくいかない。

 スポーツクラブなどにあるエアロバイクに脳トレ画面を合体したコグニバイクを試したことがある。運動と脳トレを同時にする一種のデュアルタスクだ。画面に出るのは動物合わせとか数字問題など。初級から上級まであった。

 僕は自信満々で上級にチャレンジした。40分で3回やったが結果は100点満点で39点が最高、赤点評価だった。心なし、前頭葉から頭頂葉にかかる部分が痛くなった。太ももが張った。

 このように、複数の負荷をこなすのは、現役時代、職場では日常茶飯事のことだった。リタイアしてからはめったになくなったが、時に用事が重なることもある。そんな時にはバランスが崩れる。失敗を回避するための転ばぬ先のつえだと思いながら苦手のデュアルタスクを実践している。

 ■山本朋史(やまもと・ともふみ) 1952年生まれ。週刊朝日編集委員などを経て現在はフリー。2014年軽度認知障害と診断され早期治療に励む。著書に『悪党と政治屋 追跡KSD事件』『認知症がとまった ボケてたまるか実体験ルポ』など。

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