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静岡吟醸のさらに向こうへ… 静岡県「臥龍梅」

 臥龍梅(がりゅうばい)は、三和酒造(静岡市清水区)の鈴木克昌社長が、2002年に発売した新ブランドだ。総米660キロの吟醸小仕込みを基本とし、大吟醸はすべて袋吊り。鑑評会出品酒と異なるのは、米の種類と精米歩合のみという、極めてぜいたくな酒である。

 その最大の特徴は、静岡酵母を使っていないこと。静岡の酒で静岡酵母を使わないことはかなり異端だが、県内最後発のブランドだったため、他との差別化を考え、あえて同じ酒質にしなかったのだ。また、静岡酵母が世に出て一世を風靡したのは、昭和50~60年代のこと。「もうこだわる必要もないのでは」と鈴木社長は言う。

 「それに、じつを言うと、私は静岡酵母の酒があまり好きでないのです」

 もちろん鈴木社長も、静岡酵母の生みの親、河村伝兵衛氏に師事し、酒づくりを勉強した。そして、静岡酵母で河村流の静岡吟醸をつくってみたものの、独特のセメダイン臭や苦薄さなどの、欠点の方ばかり気になってしまったという。

 一般的に、東北や北陸などの寒い地方では、もろみが低温でゆっくり発酵するので、味が乗った濃い酒になる。一方、暖かい気候の静岡では、アルコール発酵が早く進むため、味が乗りにくい。その上、静岡酵母は酸が出にくいため、いっそうサラリとした軽い味わいになるのだ。鈴木社長はこれに反旗を翻し、味も香りも豊かでインパクトがあり、後口のきれいな臥龍梅をつくりあげた。

 その味わいは、東京はもとより、海外でも評価が高い。インターナショナル・サケ・チャレンジでは、08年から2年連続グランプリ、昨年のクラ・マスターでも、純米吟醸の部でトップのプラチナ賞を獲得している。

 山田錦55%精米のその酒は、含み香が豊かで味が乗っているのだが、軽やかでキレが良い。「きれいで上品」とされる静岡らしさが、しっかりと表現されていることに驚いた。静岡酵母が生まれて40年。臥龍梅は、静岡吟醸のその先へと向かっているようだ。

 ■江口まゆみ 酔っぱライター。世界中の知られざる地酒を飲み歩き、国内でも日本酒、焼酎、ビール、ワイン、ウイスキーのつくり手を訪ねる旅を続ける。大人気のラブコメ漫画『酒と恋には酔って然るべき』(秋田書店)の原案を担当。

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