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前身「中華そば 江ぐち」から数えると70年の歴史 「中華そば みたか」

 昔、三鷹に「中華そば 江ぐち」という店があった。創業1949(昭和24)年、TVドラマ化された『孤独のグルメ』の原作者でもある久住昌之氏が『小説中華そば「江ぐち」』を書いたことでも知られている。

 創業時は屋台だったが1階の路面店に変わり、86年地下1階に移った。1階にあった頃、初めて訪れ、麺の個性に驚き、うまいのかどうかわからぬまま時が過ぎ、地下に移転してから再訪し、その魅力にはまった。

 特徴はなんと言っても地粉を使った自家製麺。蕎麦のようなボソッとした感じ。昼でもビールを飲みながらゆっくり食べる人に向けて作られたのか? と思えるほど。伸びずにゆっくり食べられる。チャーシューメンが「チャシューメン」と書かれていたことがよく語られていたが、実は後半にはちゃんと「チャーシューメン」と書き直されていた。

 私は最初こそ、中華そば(300円くらい)だったが、あまりにも安くて申し訳なく、2回目以降は別なメニューを頼むことにしていた。五目ラーメンが多かったかな。五目の具はチャーシュー・ハム・茹で卵・モヤシ・ピーマン・メンマ・ナルト・ネギ。

 3人の男性が働いていたが私はラーメンを作っている人こそが店主だと思っていたのだが、その人は井上修さんで2代目店主は別の人だった。井上さんの個性的な表情と独特なリズムのラーメン作成工程こそが私にとっての「江ぐち」だったのだが、店主ではなかったと知ったときの驚きは尋常ではなかった(笑)。

 2009年12月に店主が亡くなり、翌年1月末に閉店。営業最終日は数時間待ちだったという伝説もある。同年5月1日に製麺担当だった人が「中華そば みたか」と名前を変えて復活。内装や味は「ほぼ」同じだった。また、うれしかったのは「チャシューメン」に戻っていたことだ(笑)。値段が変わり、そこは直されても「チャシュー」はそのままなのだ。

 今回は久々の来店でもあり、これまでの恩返し的な気持ちも込めて値段MAXの「五目チャシューワンタンメン」950円を注文。券売機などは昔も今もない。待ってる間に常連さんの「半熟玉子」を見て思いだし、私もそれを追加。麺茹での鍋に生卵を投入し、ポーチドエッグ状態に仕上げてくれる。

 茹で湯自体はそんなにきれいではないが、ここではそんなことは関係ない。たまにラーメンの中にその玉子の残りが入っていることもある。またラーメンを出してくれるときにスープに親指が入っていたことも多数。昭和の空気も受け継がれているのだ。

 帰り際に言われた「“久しぶりに”ありがとうございました」という言葉に目が潤んだ。また来よう、という気持ちになるひと言だった。

 ■ラーメン耳寄り情報

 中華そば みたか(三鷹) 今年5月で10周年を迎える。その前身「中華そば 江ぐち」から数えると70年の歴史になる。経営者や店名は変わったが昔ながらのその味は雰囲気、たたずまいとあわせて昭和そのもの。ずっと残ってほしいラーメン界の財産である。

 ■大崎裕史(おおさき・ひろし) 自称「日本一ラーメンを食べた男」。2019年6月現在で1万2500軒、2万5500杯のラーメンを食破。株式会社ラーメンデータバンク代表取締役、日本ラーメン協会理事。Webおよび携帯の「ラーメンバンク」を運営している。

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