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【「心の老い」は克服できるか】「老人性うつ」は薬物治療中心も使い方に注意! 「クスリによって『血圧を上げる』『尿が出にくくなる』など副作用」も

 認知症と老人性うつの患者数が激増している。現場でどんな治療をしているのか? 医師でジャーナリストの富家孝氏が、精神科医の吉竹弘行氏に聞く。

 ◆認知症は非薬物療法

 --症状が似ている老人性うつと認知症。治療法も同じようですか?

 「処方するクスリが同じ場合はあります。興奮しがちなら、どちらにも向精神薬を使います。睡眠障害があれば睡眠薬を処方します。ただし、認知症患者さんに処方できるクスリは、基本的に抗認知症薬と呼ばれる4種類だけです。最近は、その効果が疑問視されているので、脳トレ、ゲーム、パズル、計算ドリルなどを使用した学習療法、書籍の音読など認知機能の維持のための非薬物療法が中心です。こちらは介護施設、老人施設の役割です」

 「老人性うつに関しては、いちおう薬物治療が中心で、一般的なうつ病と同じように、抗うつ剤などを使用するのが基本。ただし、老人性うつの場合、抗うつ剤の使い方には注意が必要です。高齢者は持病のある方が多いので、クスリによって『血圧を上げる』『尿が出にくくなる』など副作用があるからです」

 --老人性うつが、一般のうつ病と異なる点はありますか?

 「うつ全般に関して言えば、脳に原因があるとされますが、原因そのものはわかっていません。私が診てきたかぎり、老人性うつの患者さんは責任感の強い方が多い。子どもさんや奥さんの世話になるのを極端に嫌い、なんでもやろうとしてかえって悪化します」

 「心理的要因によるうつの場合、原因と推測されるストレス、人間観関係の変化などを取り除くことで改善しますが、食欲がない、眠れない、腰痛が取れないといった身体的症状が伴ううつの場合、原因らしきものがあっても、なかなか好転しません」

 --どんな処方を?

 「たとえばSSRI(抗うつ剤、選択的セロトニン再取り込み阻害薬)を処方して、2週間で快方に向かった方もいました。クスリが合わないと、1年以上かかることもあります。人それぞれなので、飲んでみないと効果がわかりませんが、半数以上の方は薬物治療で寛解に向かいます。この点、認知症とは違います」

 --私も現場に行くことがありますが、認知症と老人性うつを混同している方がいますね

 「認知症の主な症状としては、物忘れなどの記憶障害、時間や場所などの認識が低下する見当識障害、計画を立てる・こなすが困難になる実行機能障害が挙げられます。個人差があり、症状が一律に出るわけではありません。老人性うつの場合も、物忘れなどが起こるので、これを初期の認知症として誤解してしまいがちです。うつの場合は落ち込んでいるので、『大丈夫。頑張って』と声をかける方がいますが、これは禁物です。本人は十分わかっているはずですから」

 --そうですね。

 「治療を受ければうつ状態は改善するので、それから、だんだんに社会や人と接点を持たせ、精神を刺激していくことが肝心です。家族だけで手に負えない場合、私はデイサービスなどを利用することを勧めています」

 ◆屋外の散歩や体操を

 --外出の効果は?

 「うつ病はセロトニン(脳内物質)と関係が深いとされます。太陽光を浴びるとセロトニンの分泌が促されるので、屋外の散歩、軽い体操などで適度に体を動かすことを勧めています。それと偏食はいけませんね。栄養バランスのいい食事を確実にとるべきです」 (次回は「認知症では思ったら?」)

 ■吉竹弘行(よしたけ・ひろゆき) 1995年、藤田保健衛生大学(現・藤田医科大学)卒業後、浜松医科大学精神科などを経て、明陵クリニック院長(神奈川県大和市)。著書に『「うつ」と平常の境目』(青春新書)。

 ■富家孝(ふけ・たかし) 医師、ジャーナリスト。1972年東京慈恵会医科大学卒業。病院経営、日本女子体育大学助教授、新日本プロレスリングドクターなど経験。『ブラック病院』(イースト・プレス)ほか著書計67冊。

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