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【歯周病とコロナ 感染予防を追う】感染拡大の陰に口腔内の細菌が暗躍? 注目されるオーラルケア

 全国的な緊急事態宣言解除から2週間が過ぎたが、いまも第2波、第3波の襲来への警戒の必要性が叫ばれている。

 治療薬やワクチン開発にはなお時間を要すると見られる中、手洗いの励行、マスクの着用、3密の回避など、できることを確実に実践していくしかない。

 そんな中で、ある取り組みが注目されている。それはオーラルケア、つまり口腔衛生の維持と向上だ。

 新型コロナウイルスが感染する経路として、口、鼻、目があることは周知のとおり。自粛要請の解除を受けて、人と接することが避けられない業種では、マスクやゴーグル、フェイスシールドで防御しながらの経済活動再開が一般化している。

 しかし、ここでいうオーラルケアとは、感染経路としての口ではなく、細菌の温床となり得る口腔の衛生状態を問題としている。

 東京都渋谷区にある片平歯科クリニックの片平治人院長が言う。

 「目、鼻、口の中でも、細菌やウイルスが侵入経路として大きいのが“口”。特に口腔内に棲みつく細菌は、様々な歯周病や歯肉炎などの口腔疾患を引き起こすだけでなく、インフルエンザなどのウイルスによる感染症のリスクを高めることがわかっているのです」

 ここで「細菌」と「ウイルス」の違いを整理しておきたい。どちらも目に見えない小さなものであることは同じだが、その実像はまるで異なる。

 細菌(バクテリア)は単細胞の生物で、大きさは1~10マイクロメートル。細胞があるので自分で分裂することで増殖できる。

 一方、ウイルスのサイズは細菌の100分の1程度と比較にならないほど小さく、細胞を持たないので自分で増殖することができない。このことをもって「ウイルスは生物ではない」とする研究者も少なくない。ウイルスは、自分以外の生物の細胞に入り込むことで初めて増殖することができるのだ。

 そしてもう一つ、細菌とウイルスで決定的な違いがある-と語るのは、鶴見大学大学院歯学研究科副研究科長の花田信弘教授だ。

 「体内に細菌やウイルスが入ってきた時の対処法がまるで異なるのです。人間は、細菌に対しては抗生物質という武器を持っているが、ウイルスにはこれといった武器を持たない。人間の体に備わっている“免疫”で闘うしかないのです」

 タミフルに代表される抗ウイルス薬はあるにはあるが、細菌に対する抗生物質と比べると効果は限定的だ。

 今回の新型コロナウイルス性肺炎(COVID-19)の患者が増加傾向にあったころ、最後の手段として「ECMO(体外式膜型人工肺)」という医療装置が話題になった。ニュースなどでこの装置を解説する専門家が、口を揃えて言っていたのが、「ECMOは治療機器ではない」ということだった。

 ECMOは機能が低下した肺の替わりに血液から二酸化炭素を取り出し、酸素を与えて体内に戻す装置。肺炎を治したりウイルスを除去する機械ではない。免疫の力で肺の機能が戻るまでの間をつなぐ生命維持装置なのだ。

 このことからもわかるように、現状でのウイルスとの闘いは、免疫まかせ-というのが実情だ。

 繰り返すが、今回問題である新型コロナは、細菌ではなくウイルスだ。ならば口に細菌が入ろうが棲み付こうが関係ない、と思うかもしれない。

 しかし、実際はそうでない。新型コロナウイルス感染拡大の陰に、細菌、しかも口の中にいる菌が暗躍していることが、最近の研究から見えてきた。

 あす以降、その詳細を解説していく。(中井広二)

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