【BOOK】AI進化で問われる人間の覚悟 意識が生まれる日は来るのか 茂木健一郎さん『クオリアと人工意識』 (1/2ページ) - zakzak:夕刊フジ公式サイト

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AI進化で問われる人間の覚悟 意識が生まれる日は来るのか 茂木健一郎さん『クオリアと人工意識』 (1/2ページ)

 脳科学、認知科学の第一人者として活躍する茂木健一郎氏が、自身のメーンテーマとして追いかけてきた「意識」と「クオリア」について16年ぶりに書き下ろした本書は、氏の新たな代表作にして問題作になった。人工知能(AI)が「人間と同等」になる日は、くるのだろうか。 文・たからしげる 写真提供・茂木健一郎氏

 --まず、クオリアとは何ですか

 「赤い色の感じとか、水の冷たさなど、心の中で感じる質感を表します。現代の脳科学では、私たちの持つ意識の本質と考えられています。また、人工知能には持てない、私たちの意識だけが持つ性質がクオリアなのではないかと言われています。人間の経験の価値を支えるものですから、感動、うれしさ、味わいなど、日常の生活や経済を考える上で大切なことにも関係しています」

 --脳科学的に説明のつく現象ですか

 「最終的には科学的に説明できると多くの研究者が信じていますが、今のところ決定的な理論、実験はありません。クオリアを解き明かすことは、人類の知的チャレンジの中でも最大のものとみなされています。ただ、脳の中の神経細胞の活動からクオリアが生まれることだけは今までの研究から確かです」

 --自身がクオリアについて関心を持ったのはいつ、どんなきっかけから

 「物理学の大学院で博士号をとったあと、理化学研究所で脳の研究を始めて2年目の冬でした。電車の中でノートを書いていて、突然、ガタンゴトンという音が生々しい質感として聞こえました。その瞬間、この質感は、いくら音波を周波数で分析してもわからないな、と悟りました。後に、それがクオリアと呼ばれていることに気づいたのです」

 --人間の脳と、人工知能との違いは

 「何よりも違うのは個性です。その個性が創造性と結びついているところです。人間には一人ひとり欠点があります。長所もあります。そして欠点と長所が表裏一体になっています。一方、人工知能は、究極の優等生みたいなところがあります。人間は誰もが劣等生でもあり、優等生でもある。そのアンバランスこそが人間の脳の特徴なのです」

 --話題となっているシンギュラリティとは

 「もともとの定義は、自分で自分を改良・進化させることができる人工知能が生まれることです。自分で成長する人工知能ができると、人間はやることがなくなります。現在はまだ、将棋やチェスなどで人間を凌駕(りょうが)する人工知能はできていますが、自分で自分を改良する万能型は、できるのかどうかもわかっていません」

 --人間の意識は機械でコピーできるかという問題にも踏み込んでいる

 「理論的に可能だと考える研究者と、私のように無理だと考える研究者がいます。可能だと考える研究者たちは、機械に意識を移して永遠の生命を得るプログラムを実施したいと主張しています。これは、生命とは何かという問題につながっていきます。意識の問題は、生命現象と深く結びついているからこそ興味深いのです」

 --そして、人工知能に意識が生まれると

 「自動運転の車に意識があるとすると、その良心の問題をどう考えるのか、ロボットに意識が生まれたら、その人格はどう扱うべきなのかといった幅広い倫理問題が生まれてきます。人工知能の発達で、人間がいかに生きるべきか、何が大切な価値なのかという私たちの覚悟が問われてくるように思います」

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