【BOOK】犬と出会い救われる死 人類の愚かしさ悲しさ表現するのに効果的 馳星周さん『少年と犬』 (1/2ページ) - zakzak:夕刊フジ公式サイト

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犬と出会い救われる死 人類の愚かしさ悲しさ表現するのに効果的 馳星周さん『少年と犬』 (1/2ページ)

 1996年のデビューと同時に直木賞初候補から実に7回。ほぼ20年越しでつかんだ栄冠だ。受賞作は出世作のノワール(暗黒)小説とは真逆に思える1頭の迷い犬に人間が救われる感動のストーリー。その作品に込めた想いとは-。北海道浦河町で夏を過ごしていた馳星周さんにリモート取材した。(文・竹縄昌)

 

 --7度目の候補でした。聞いたときは

 「6回も落ちて、もうないだろうと思っていたから、“マジかよ”でした」

 --学生時代にアルバイトをしていた新宿ゴールデン街の「深夜プラスワン」の経営者でもあった内藤陳さんがご存命なら、受賞をなんと

 「よくやったな、よかったな、ぐらいだと思いますよ」

 --コロナ禍で、選考会後の記者会見も先日の贈呈式もリモート画像での出席でした

 「昨年から夏の3カ月ほどを故郷の浦河町に滞在するようになりました。ここは競走馬の産地なんですが、この町には感染者がいないんです。僕が東京を往復し、もしコロナウイルスを持ってきてしまって牧場の関係者に感染したら、馬の世話をする人がいなくなってしまうこともなきにしもあらずだったものですから用心しました」

 --ノワール小説の旗手。しかし今作はそれとは別種の作品での受賞です

 「でも、馳星周という小説家のものの見方、世界観は変わらなくて、ただ表現の仕方が年齢とともに変わっているんです。若い頃は狭量だけど、今はいろんなことを受け入れられるようになったということだと思います」

 --今の世界をどう見ますか

 「人間って僕も含めて愚かだなって思います。今のコロナ禍に関しては、大変苦しんでいる人たちがいることはわかった上で言いますが、いい面もあった。それは、4、5月にほとんど全世界的に経済活動が止まったとき、破壊された自然環境が急速に回復したと実証されたところもあるんですね」

 「これは資本主義経済をそろそろ考え直せよ、と地球に言われているような気がしているんです。コロナウイルスだって、たぶん、(経済優先が)中国の奥地でひっそり眠っていたウイルスを引っ張り出してきたんじゃないかな。このままじゃ立ちゆかないという現実を突きつけられている。それを受け入れられるかどうか、その辺が、難しいですね」

 --そういう愚かな人間を止められるのが、無償の愛を注ぐ犬など動物たちじゃないか、その意味で犬を主人公にしていると

 「そう、僕は犬と30年以上暮らしているし、人類という存在の愚かしさとか悲しさを表現するのに、犬を使うのは効果的だと思うんです。とりわけ犬は何万年前かわからないけど、たぶん狼と人間は一緒に暮らすことを選択して共存関係になった。そこから人と犬の暮らしが始まっていて、猫も含めて他の動物と違うところです。牛、馬もいますが家の中で一緒に暮らすのは犬だけだと思います。人類という“種”の存在をあぶり出すのに一番いい存在です」

 --6話の連作短篇ですが、「死」が通底しています

 「“死”といっても、今までの犯罪に関わった人間が死んでいく物語とはちょっと違うんです。死んでいくんだけども、多聞(犬名)と出合い、多聞と暮らしたことによって彼らの中で何かが変わり、救われていく話にしたかったんですね。死ぬことはみんな一概に悲しいこと嫌なことと思っているけど、そうではない。何も考えずただ死んでいったり、失意のうちで死んでいくのと、救われて死んでいくのは同じ死でもなにか違うんじゃないか、という思いがあってそれを書いたつもりです」

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