【ここまできた男性不妊治療】記者体験手記(後編) 手術で精子改善、不規則生活改め念願の第1子 4人に1人が基準値下回る実態も…広まらない精液検査 - zakzak:夕刊フジ公式サイト

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【ここまできた男性不妊治療】記者体験手記(後編) 手術で精子改善、不規則生活改め念願の第1子 4人に1人が基準値下回る実態も…広まらない精液検査

 現在、国内夫婦の5・5人に1人が不妊の検査や治療を受けているといわれる。だが、男性側の取り組みが報じられることは極めてまれだ。不妊治療に真正面から取り組んだ男性記者の体験手記・後編をお届けする。

 男性不妊の典型的な原因である「精索静脈瘤」の手術を受けた後、初の精液検査を行ったのは2015年2月19日である。治療で精子の状態は改善されたのだろうか-。

 14年11月20日の手術からちょうど3カ月が経過していた。不妊が判明した同年6月よりも緊張したことを覚えている。

 幸い、数値は改善に向かっていた。精子濃度がWHO(世界保健機関)の基準値を上回っていたのだ。運動率、前進運動率も基準値に近づいていた。

 男性の不妊治療を行う専門医でつくる「NPO法人男性不妊ドクターズ」(永尾光一理事長)のホームページによると、精索静脈瘤の手術で精液所見は51~78%も改善する。精索静脈瘤は男性不妊の4割を占める主要な原因だ。手術を行うことで人工授精、体外受精、顕微授精の「成績」が上昇することも明らかになっている。

 正しい選択ができたのは迷わずに専門の病院へ行き、精液検査を受けたからだと思う。

 それでも、すぐに子供ができるほど万全な状態ではない。かろうじて自然妊娠が可能というレベルだ。精子はアルコールやストレス、疲労の影響を受けやすい。数値が改善されて油断したのだろう。このころの私は深酒を繰り返し、仕事優先の不規則な生活を繰り返していた。

 手術から約7カ月後、15年6月13日の精液検査で驚くほど悪い結果が出た。精子濃度が手術前よりも低かったのだ。医師や妻の助言を踏まえ、アルコールをやめ、疲労が蓄積しないように気をつけた。

 節制が効いたのかどうかは断定できないが、7月に妻が自然妊娠した。長女は16年3月に無事に生まれた。まもなく5歳を迎える。元気に幼稚園に行っている。

 自分の経験に基づき、男性不妊という課題に強い関心がある。WHOの調査で不妊原因の約半分は男性にあることがわかっている。男性側の治療、精子の質の改善に向けた努力は不可欠だ。

 しかし残念ながら、精液検査は一般的には広まっておらず、精索静脈瘤手術の有効性もまだあまり知られていない。精子の質を改善することなく、人工授精、体外受精、顕微授精を実施しても結果は出にくい。女性が苦労するだけだ。順天堂大医学部附属浦安病院泌尿器科の辻村晃教授は「精子の濃度や運動率が、WHOの下限基準を下回っている男性が4人に1人いる」と警告している。

 先日、大流行中の音声SNS「クラブハウス」(Clubhouse)で男性不妊について語った。国会議員や専門家、不妊治療中の女性らが参加してくれた。予想通り、男性が不妊治療に消極的なエピソードが多かった。

 変化もみられる。菅義偉政権が不妊治療への保険適用を表明し、男性不妊に言及し始めた。歓迎したい。男性不妊がもっと世間に認識され、男女、夫婦、カップルで不妊治療に取り組むことが当たり前になってほしい。(あすは、「無精子症」の最新治療)

 ■山本雄史(やまもと・たけし) 42歳、大阪府岸和田市出身。2002年産経新聞入社。社会部、政治部、夕刊フジなどで記者。現在は新規事業担当の新プロジェクト本部次長。昨年2月、男性不妊をテーマにしたシンポジウムを企画。治療経験を実名公表している。16年に長女誕生。

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