【ドクター和のニッポン臨終図巻】ドラム奏者・村上“ポンタ”秀一さん 死因は視床出血 2度と現れないであろう破天荒型の天才 - zakzak:夕刊フジ公式サイト

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ドラム奏者・村上“ポンタ”秀一さん 死因は視床出血 2度と現れないであろう破天荒型の天才

 井上陽水、吉田拓郎、山下達郎、松任谷由実、吉田美奈子、矢沢永吉、沢田研二、さだまさし、泉谷しげる、桑田佳祐、長渕剛、EPO、角松敏生、尾崎豊……レコーディングした曲は1万4000曲を超えていたというから驚きです。僕の地元・兵庫が生んだ世界的ドラム奏者、村上“ポンタ”秀一さんが、3月9日に都内の病院で亡くなりました。享年70。死因は、視床(ししょう)出血との発表です。

 この病名を初めて耳にした人も多いかと思いますが、視床出血とは、脳の細い血管が破れる脳出血のひとつです。

 年間29万人が発症する脳卒中(脳血管疾患)は、脳梗塞・脳出血・脳塞栓と大きく3つに分類されます。うち、脳出血はそれが起きた場所よって、被殻(ひかく)出血、視床出血、橋出血、大脳皮質下出血など呼び名が変わります。

 ポンタさんが発症した視床出血は、脳卒中全体の発症者から見ると約9%に該当しますから、年間2万人以上がなっている計算です。他の部位で起こる脳出血よりも死亡率が高いと言われています。

 脳出血の最大の要因は、高血圧症です。かつては国民病と呼ばれていた病気ですが、塩分量など食生活の変化で、死亡者数は年々減ってきています。それでも諸外国に比べて日本は脳出血の発症率が多い国です。寒い季節に発症する人が多いこともわかっています。冬場は、急な温度の変化によりお風呂やトイレで、脳出血を起こし倒れることは珍しくありません。

 ポンタさんは2月8日に倒れて入院したそうです。視床出血は原則、外科的処置の適応はありません。1カ月あまりの闘病中、意識が戻ることはなかったとのこと。眠るように逝ったのでしょうが、あまりにも早い旅立ちです。

 ポンタさんの著書『自暴自伝』にこんな記述がありました。

 〈アフリカツアーでよく覚えているのは、どの国でも「リンゴ追分」をやったこと。「リンゴ~」の部分で総立ちなんだよ、どこの国でも。やっぱり曲ってすごいな、と思ったよね。はじめは、美空ひばりってそんなに有名なのかと思ってたんだ。でも違った。この曲を知ってるやつなんかいないんだよ……〉

 いい曲だと思えば、ジャズであろうと歌謡曲であろうとアニメであろうとジャンルを超え、国境を超え、叩き続けたドラマー人生。「ドラムが上手くなりたければ、酒を呑んでお姉ちゃんと遊べ」と豪語しておられました。もう2度と現れないであろう、破天荒型の天才。追悼ライブを是非お願いします。

 ■長尾和宏(ながお・かずひろ) 医学博士。東京医大卒業後、大阪大第二内科入局。1995年、兵庫県尼崎市で長尾クリニックを開業。外来診療から在宅医療まで「人を診る」総合診療を目指す。この連載が『平成臨終図巻』として単行本化され、好評発売中。関西国際大学客員教授。

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