【ドクター和のニッポン臨終図巻】体操選手・政治家、小野清子さん 子守しながら東京五輪で銅 - zakzak:夕刊フジ公式サイト

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体操選手・政治家、小野清子さん 子守しながら東京五輪で銅

 果たして東京オリンピック・パラリンピックは無事に開催できるのか。森喜朗さんの後任で組織委員会会長に就任された橋本聖子さんの重責を想うと心配になります。若い世代は、橋本さんがオリンピックメダリストであることを知らない人も多いようで、だとしたら、この人のことはもっとご存じない方が多いことでしょう。

 1960年のローマ大会と、64年の東京大会に体操選手として出場。東京のときは二児の母として、団体競技で銅メダルを獲得。その後86年に参院選に自民党から初当選し政治家に転身。女性初の参院予算委員長や、内閣府特命担当相を務め、スポーツ振興にも尽力なされた小野清子さんが、3月13日に亡くなりました。享年85。死因は新型コロナウイルスが悪化したためとの発表です。

 小野さんは1月中旬に自宅で転倒骨折し、入院しました。その入院先でコロナウイルスに感染。感染症指定医療機関に転院し治療を続け、1度は回復したようですが、その後容体が急変し、帰らぬ人となりました。

 なんと不運な…と思う人も多いと思います。しかし、入院先でコロナに感染する高齢者は、正確なデータは出ていないものの少なくはありません。しかも、小野さんが入院したのは1月ということですから、病院が最も危機的状況にあった頃だと思われます。

 クラスターが特に発生しやすい場所は、レストランでも劇場でもなく、病院と介護施設です。しかも、そこは感染リスクの高い、免疫力が下がっている高齢者が一番集まる場所。どんなに感染症対策を心掛けたとしても、防ぎようのない場所でもあります。また、認知症の患者さんもおられるため、患者さん全員にマスクを徹底するのもなかなか難しいのが現状です。

 小野さんのように自宅で転倒骨折する高齢者も増加しているなと感じています。コロナが怖くて出歩くことが激減したために、足腰が弱ってしまっているから。80代を過ぎて転倒骨折で入院し、寝たきりの状態が1カ月も続けば、認知症が一気に進んでしまいます。

 僕が今1番恐れているのが、コロナ禍の行き過ぎた自粛や転倒骨折から認知症に至る人が増えることです。ようやく暖かくなってきた今、たとえ1日10分でもいいのです。どうか、人の密集を避けながら散歩をしてください。歩いてお花見を楽しんでください。

 小野さんは、東京五輪の練習中に視察に来た国会議員に「今、何が一番欲しいか」と問われ、「子守をしてくれる人」と答えました。それから半世紀以上…ジェンダーの問題がいまだ山積の日本のオリンピックと政治に小野さんは何を想われ、旅立ったでしょうか。

 ■長尾和宏(ながお・かずひろ) 医学博士。東京医大卒業後、大阪大第二内科入局。1995年、兵庫県尼崎市で長尾クリニックを開業。外来診療から在宅医療まで「人を診る」総合診療を目指す。この連載が『平成臨終図巻』として単行本化され、好評発売中。関西国際大学客員教授。

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