【暗黒大陸を照らす光 膵臓がん治療最前線】5年生存率いまだ1桁…早期発見が難しい膵臓がん、遺伝子変異に基づく「ゲノム医療」に期待 - zakzak:夕刊フジ公式サイト

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5年生存率いまだ1桁…早期発見が難しい膵臓がん、遺伝子変異に基づく「ゲノム医療」に期待

 がん治療の進歩により、全がん平均の5年生存率は6割を超えているが、膵臓(すいぞう)がんだけは40年間、1桁台に低迷したままだ。“暗黒大陸”と言われてきたように、膵臓は胃の裏側の奥にあるため早期発見が難しく、手術が可能な状態で発見される割合は2割程度。切除不能の場合の告知は依然、「死刑宣告」に近いイメージがある。

 「確かに5年生存率でみるとそうですが、しかし着実に膵臓がん治療は進展しています。有効な治療薬が1剤しかなかった頃は切除不能の患者で6カ月延命できればいいほうだった。ところが今はいろいろ使える薬が増えてきて、よほど見つかったときに手遅れでなければ1年半や2年生き永らえる方もめずらしくなくなってきました」

 こう語るのは米国有数の膵臓がん患者支援団体の日本支部、NPO法人パンキャンジャパン理事長の眞島喜幸さん。膵臓がんによる実妹の死をきっかけに同法人を立ち上げ、自身を襲った家族性膵がんを乗り越えながら、最新治療の情報収集・提供、治療薬の承認遅延の短縮・解消、研究者支援などに努めている。

 膵臓がん治療の国際的な動きに精通している眞島さんからみれば、近い将来、5年生存率を飛躍的に高める治療法や新技術が出てくる可能性は高いという。

 「1つは採血だけでがん診断につなげる検査です。米国で研究中ですが、実用化されれば早期発見により手術適応例が増えるので生存率は自ずと高まります」

 もう1つは、がんの原因となる遺伝子の変異に基づいて診断・治療を行うゲノム医療だ。これまで変異により、がんになると思われる遺伝子は100種類以上みつがっているが、「膵臓がん患者の95%にKRAS遺伝子の変異があることがわかってきました。つまり、この遺伝子変異をターゲットとした薬が開発されれば、ほぼすべての患者さんに高い効果が望める治療になります」(眞島さん)。

 適応患者は数%とわずかだが、すでに膵臓がん治療でも遺伝子変異に基づいた薬がいくつか承認されているほか、他のがんで承認された遺伝子変異対応薬が膵臓がんに効くケースもある。

 「米国では、膵臓がん患者の25%で治療薬のある遺伝子変異が見つかり、他のがんで承認された適応外薬でも投与できるようになっています。日本でも遺伝子変異のタイプがわかり、対応する薬がある患者さんのために、患者申出療養制度を使って製薬企業3社13剤の薬が無償提供される仕組みができています」と眞島さんは紹介する。

 これは患者にとって朗報であろう。

 しかし、この制度を利用できるのは、一度に多数の遺伝子変異を調べる遺伝子パネル検査を保険診療で受けた患者のみ。同検査の保険適用は「標準治療の終了(見込み)」が条件となるが、「すべての標準治療は終わるまで」あるいは「標準治療が終わる前でも申請できる」など、その解釈は主治医によってバラつきがあるのだとか。当面は遺伝子パネル検査に積極的な医師を探すしかないが、膵臓がんの診断時に検査を受けられるようにしてもらいたいものだ。 (取材・吉澤隆弘)

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