【暗黒大陸を照らす光 膵臓がん治療最前線】膵臓がん患者、炭水化物摂取による体重増加で延命 体力があれば抗がん剤の使用可能に - zakzak:夕刊フジ公式サイト

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膵臓がん患者、炭水化物摂取による体重増加で延命 体力があれば抗がん剤の使用可能に

 切除不能の膵臓がん患者の生存期間は平均で1年ほどと言われているが、6カ月もたない方もいれば、2年以上生き永らえる方もいる。両者の違いは何か。進行の速さや抗がん剤の効き具合のほかに、考えられるのが化学療法に耐えていくための体づくりだ。

 糖尿病患者に個々の重症度に応じた糖質制限を治療に取り入れている灰本クリニック(愛知県春日井市)では、膵臓がん患者に対して炭水化物と脂質の摂取を促す。同時に、膵臓がん患者の多くが糖尿病を発症することをきっかけに、インスリン療法を導入し、体重の維持・増加に努めている。

 「化学療法を続けていくための大前提が体重です。さいわい、今の抗がん剤はある程度効きます。だから体重を増やして体力をつけておけば、耐性がついて薬が効かなくなったりしない限り、使い続けられます」と灰本元医師は指摘する。

 糖尿病をはじめ生活習慣病の食事療法はいかに肥満を改善するかが大きなテーマ。しかし、膵臓がん患者では、糖質およびカロリーが多い脂質を同時に摂取させ、インスリンの作用で余った血糖を脂肪細胞に変化させて、太らせるという真逆のことを行っているわけだ。

 きっかけは、手術はできたものの、がんを取り切れなかった患者にこの食事療法を試し、4年半の延命が図れたこと。続いて切除不能の膵体部がんを患った67歳の女性に実践してもらったところ、化学療法を2年間継続し、2年半延命することができた。

 「体重は来院時42キロしかありませんでしたが、最大48キロまで増えた。ただ開始から1年目に大崩れし、体重もガクンと減って乗り越えられないかなと心配しましたが、その後、持ち直して頑張ってまた食べ始めた。ここが分岐点だったと思います」(灰本医師、渡邊志帆管理栄養士)。

 副作用などで食欲がないときは無理をせず、食べられるときに食べるのがポイントだ。

 とはいえ、うまくいった事例ばかりではない。まずこの食事療法への理解が必要だが、もともと糖尿病で膵臓がんになった方は、これまでの糖質・カロリー制限の食事が刷り込まれているので、なかなか切り替えができないのだという。

 また糖質イコール「がんの餌」というイメージから、炭水化物を摂ることをためらう患者も少なくない。

 「限られた生存期間を伸ばすというときに、10年先の病気を心配して血糖値を気にしてもしようがない。また、がん細胞は糖代謝で増殖するので、厳しい糖質制限でダメージを与えることができるかもしれませんが、体重は激減するのでかえって体力は弱まります。それよりもインスリン+糖質摂取でがんも正常細胞も元気になるけど、がんのほうは抗がん剤でたたくという考え方のほうが合理的で、実際うまくいきます」

 灰本医師はそう話す。

 昨年末に出された海外の研究論文では、化学療法を開始して4週間以内に体重が5%以上減った場合、ステージや抗がん剤の効果の有無にかかわらず、2・5カ月ほど生存期間が短くなるとの結果が報告されている。膵臓がん患者の体重にもっと注意を向ける必要がありそうだ。(取材・吉澤隆弘)

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