【暗黒大陸を照らす光 膵臓がん治療最前線】膵臓がん、血液採取で診断する「リキッドバイオプシー」 患者の負担軽減へ、治療後の再発予測・予後予測などを臨床研究 - zakzak:夕刊フジ公式サイト

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膵臓がん、血液採取で診断する「リキッドバイオプシー」 患者の負担軽減へ、治療後の再発予測・予後予測などを臨床研究

 5回にわたって膵臓がん治療の最前線をみてきたが、治療にかかわってきた医師らが一様に声をそろえるのは、膵臓がん治療が一昔前に比べて様変わりしていることだ。日本屈指の膵臓がん手術数を誇る静岡がんセンター病院長の上坂克彦医師もその1人。「2000年代の初めは何をやっても上手くいかなかった。例えば手術しか治す方法がないと言いながら、5年生存率はたかだか10%でした」と振り返る。

 流れを変えたのは、術後の補助化学療法の進歩である。2007年からのゲムシタビンの術後投与で手術適応患者の5年生存率は20%を超え、そして2013年には、上坂医師が主導した臨床試験で術後化学療法としての有効性でTS-1がゲムシタビンをはるかにしのぐことがわかり、一気に40%台までに引き上げた。

 「今は切除可能症例でもまず術前に化学療法が行われており、その5年生存率はまだ出ていませんが、50%を超えることが予測されています。一般の方たちにはなかなか、膵臓がん治療の発展はわかりにくいと思いますが、治療に携わってきた立場からいえば今は別世界です」(上坂医師)

 一方、切除不能の膵臓がんを対象とした化学療法も進化しており、長期間、奏効して原発巣が縮小したり、転移巣が消えれば手術適応の可能性が出てきたのは、既報のとおりだ。

 このように膵臓がん治療は全体的に良くなっているものの、変化があまりみられないものもある。切除可能症例の増加が見込まれる早期診断だ。

 そこで今注目を集めているのが、血液中からがんのDNAを採取し、診断や治療後の評価を行うリキッドバイオプシーといわれる検査である。血液採取だけで済むので患者の負担は少なく、繰り返し検査できるという利点もある。

 「われわれがリキッドバイオプシーに一番期待しているのは早期診断ですが、これまでの研究を見る限り、早期診断はまだまだ難しいと思います。一方で、膵臓がんにかかった方の治療後の再発予測、予後予測などを対象とした臨床研究が進められており、実用化されれば、その予測に応じて治療を変えるといった個別化治療が進んでいく可能性はあります」と上坂医師は話す。

 例えば、手術後に高率で再発する可能性が高いとわかれば、術後化学療法はTS-1から切除不能患者に使うより強力な化学療法に切り替えるという治療も今後ありうるというわけだ。

 加えて膵臓がんの場合、遺伝子パネル検査で遺伝子変異を調べてもほとんど薬にたどり着かない状況だというが、「遺伝子変異に対応した薬剤がもっと開発されれば、さらに手術ができる患者さんが増えてくるかもしれません。そうなって生存率がさらに高まることを期待したい」と上坂医師は展望する。

 “暗黒大陸”と言われてきた膵臓がんは、現状でもいくつか光が差し込んでいる。外科と内科の集学的治療、およびゲノム医療による個別化治療の進展により、10年後20年後には今からでは考えられない別世界になっている可能性は大いにある。(取材・吉澤隆弘)=おわり

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