【産業医・シンコ先生に聞く テレワーク2年目の危機】コロナ禍で前倒しになった“定年後の光景” 陥りやすい共働き夫婦 - zakzak:夕刊フジ公式サイト

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【産業医・シンコ先生に聞く テレワーク2年目の危機】コロナ禍で前倒しになった“定年後の光景” 陥りやすい共働き夫婦

 新型コロナの長期化を受けて、テレワークも2年目に入った企業も多い。仕事を狭い自宅に持ち込めば、それだけ夫婦や家族の間にひずみが生じる。2年目のテレワークの危機をどう回避したらいいのか、世界保健機関(WHO)の公衆衛生プロジェクトに携わった経験がある産業医、シンコ先生(矢島新子医師)に聞いた。

 〈会社へは 来るなと上司 行けと妻〉

 先日発表された「第34回第一生命サラリーマン川柳コンクール」でグランプリとなった作品だ。世の男性は、ちょっと笑えないのでは。新型コロナに伴うテレワーク導入で、この句を地で行く家庭がかなりの数に上っているようなのである。

 産業医として診察だけでなく、社員の心の悩みを聞く機会も多いシンコ先生は「在宅勤務となり、平日の昼間いないはずの夫が家にいるようになり、定年後の夫婦に近い問題が生じている家庭も多いようです」と打ち明ける。

 なかでもこじれるのは、夫婦共働きで2人ともテレワークになったケース。

 都内のマンションで夫と2人暮らしで、子供はいない大橋ゆう子さん(仮名、40歳)もこれに当てはまる。

 外資系企業でキャリアを積んでいるゆう子さんは2020年4月から在宅勤務がメインとなり、それが今年も続いている。夫もほぼ同じ時期から、在宅勤務を始めた。ある1日を再現してみる。

 夫の分も含めて朝食を作り、昼食も作る。昼食は自分の分だけなら適当に済ますが、そうもいかない。午後の仕事を始める。リビングで仕事をしていると、夫が何かするたびに気が散る。夕方、仕事を終了し、夕食を作り、夕食をとる。

 ゆう子さんは、夫が進んで家事分担をしようとしないことにも不満を抱いている。「テレワークで夫も時間ができたはずなのに、自分だけ仕事をしながら、食事の用意も洗濯もしている。私の気持ちをまるで察しようとしない夫には、本当にがっかりしています」

 シンコ先生は、「コロナストレスによるイライラから欧米ではドメスティックバイオレンス(DV)が増えたことが報告されました。新婚でもない限り、一日中一緒にいることのない夫婦が四六時中一緒にいることでストレスが溜まっていくのは事実です。あげくついついイライラして、夫が暴言を吐いたり物を投げたりするケースも聞きます」

 日本では住宅事情もあり、夫の定年後、多くの家庭では、夫が平日の日中、自宅でごろごろしていることはあまり歓迎されていない。コロナの影響でテレワークが長期化するなか、定年後に訪れるかもしれなかった光景が、コロナ禍のいま、現実となっている。ゆう子さんにとって、定年後の危機が20年も早く訪れてしまったのだ。

 テレワークのイライラでコロナ離婚に至った例もあるようだ。そうならないために「夫婦が会話を取り戻し、夫は自分の父親世代のような『昭和の夫像』を見直し、家事で協力することが求められています。妻も家事分担をしてもらえるようにやんわり頼むことも必要かもしれません」とシンコ先生は助言する。 (取材・佐々木正志郎)

 ■矢島新子(やじま・しんこ) 産業医。山野美容芸術短期大学客員教授、ドクターズヘルスケア産業医事務所代表。パリ第一大学(ソルボンヌ)大学院、東京医科歯科大学大学院博士課程修了。著書に『ハイスペック女子の憂鬱』ほか。

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