【ここまで進んだ最新治療】闇取引に歯止め「精子バンク」の運用開始 「出自を知る権利」ドナー減少が課題 - zakzak:夕刊フジ公式サイト

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【ここまで進んだ最新治療】闇取引に歯止め「精子バンク」の運用開始 「出自を知る権利」ドナー減少が課題

 男性不妊の原因になる「非閉塞性無精子症」では、手術治療で精子が見つければ顕微授精で妊娠を目指すことができる。しかし、6~7割の患者は精子が見つからない。その場合、第三者の提供精子を使って人工授精を行う「非配偶者間人工授精(DI)」という選択肢がある。

 現在、日本産科婦人科学会に登録されているDI実施施設は、全国に12施設ある。しかし、近年は精子提供者(ドナー)が少なく精子の確保が難しいのが現状だ。そんな中、国内初となる民間の「精子バンク」の運用が今月から始まった。

 この精子バンクを事業の1つとするのは、昨年設立された「みらい生命研究所」(埼玉県越谷市=https://spermbank.jp)。設立にはどんな狙いがあるのか。代表取締役を務める獨協医科大学で生殖医療を専門とする岡田弘特任教授が説明する。

 「DI登録施設のドナー減少によって、いまネット上で医療機関を介さず直接ドナーを探し、個人取引を行い、登録施設以外で使用するケースが横行しています。しかし、精子提供のサイトを実際に調べてみると、感染症の検査や精液検査をしていなかったり、ドナーの本人確認ができなかったり、さまざまな不備のある取引がほとんどです。この危険な精子授受に歯止めをかけ、医療現場での安全なDIを取り戻したいと思ったのです」

 当面は精子バンクのドナーは、20~40歳の治療に理解のある医療関係者に限定し、感染症の有無や精子の状態を調べて、独自基準に達した精子を凍結保存する。そして、契約を結んだDI登録施設を対象に精子を提供し、検査料や凍結保管料として1件当たり15万円を負担してもらう。DIを希望するカップルと精子バンクとの直接的な取引はない。

 国内のDIは、これまで各登録施設が匿名を条件にドナーから精子を集めていた。しかし近年、生まれた子の「出自を知る権利」が海外で認められ始めたことで、国内でも同様の権利により、匿名のドナーに対してその情報の開示を求める動きが出てきたことがドナー減少の原因になっている。

 この課題はまだ残るが、精子バンクでは「匿名」「非匿名」「条件付き非匿名(子供が何歳になったら、どこまで開示するかなど)」の3つのパターンでの精子提供を考えているという。

 「従来のDIの妊娠率は数%ですが、質のいい精子を提供することで妊娠率30%になることを目標にしています。まだドナーがどれくらい集まるか分かりませんが、当面は年間500件程度の利用を目指します。精子は凍結してから半年後にHIVの再検査が必要なので、提供は早くても来年明けになります」

 ただし、岡田特任教授は、必ずしもDIを推奨しているわけではない。治療選択肢で最も良いのは「養子縁組」と考えていて、獨協医科大学埼玉医療センターでは積極的に不妊カップルに提案しているという。(新井貴)

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