【ドクター和のニッポン臨終図巻】ジャーナリスト・作家、立花隆さん 日本人の死生観に影響 - zakzak:夕刊フジ公式サイト

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ジャーナリスト・作家、立花隆さん 日本人の死生観に影響

 僕は死に関する本をたくさん出しているせいか、死後の世界や臨死体験について、よく尋ねられます。スピリチュアルの世界に精通していると勘違いされることもあります。しかし僕が詳しいのは、人が「死ぬまで」のことであり、「死んでから」はよく知りません。なんせ、死んだことがないもので。

 個人的には、死後の世界はよくわかりません。ただ臨死体験について訊かれたときは、まずはこの人の本を読んでくださいと答えることにしています。

 知の巨人といわれたジャーナリストで作家の立花隆さんが、4月30日に亡くなっていました。公式ホームページによれば、立花さんは糖尿病や心臓病のため、1年前に大学病院に再入院。しかし検査や治療、リハビリを拒否したため別の病院へ。転院先では、「積極的な治療を目指すのではなく、少しでも全身状態を平穏で、苦痛がない毎日であるように維持する」との方針で入院生活を続けていたようですが、4月に急変されたとのこと。享年80。死因は急性冠症候群との発表です。

 心臓へ血液を運んでいる冠動脈が狭くなったり、詰まることで引き起こされる不安定狭心症と急性心筋梗塞。この2つの病態を併せて「急性冠症候群」と呼んでいます。突然胸が締めつけられ、肩や背中まで激しい痛みに襲われる、いわゆる心臓突然死に至るケースも多いのですが、糖尿病患者や高齢者の場合は、症状がはっきりしないまま進行することも。80歳で入院中だった立花さんも、そこまで激しい痛みに襲われることなく旅立たれたのでは…と推測します。

 立花さんほど、「死とは何か?」を追い続けたジャーナリストは他にいないのではないでしょうか。1980年代、脳死問題を世に知らしめたのもこの人です。その後の臨死体験やがん治療を巡る思索は、日本人の死生観に少なからぬ影響を与えてきたはずです。あるインタビューで立花さんはこう仰っていました。

 「自殺、安楽死、脳死など、生と死に関する問題は一つの問題群として捉えるべきで、その人の死生観と切り分けられない問題なのです。どの問題を考えるにしても、結局、自己決定権がある場合は、その人の自己決定に従うしかないだろうし、神あるいは運命に決定権がある場合には、それに従うよりないだろうと思います」

 死生観について、これ以上真っ当な回答を僕は他に知りません。自己決定権を持って、見事な旅立ちをされた立花さん。でも、コロナ禍についてのあなたの考察が読めないことが、とても寂しく、不安でもあります。

 ■長尾和宏(ながお・かずひろ) 医学博士。東京医大卒業後、大阪大第二内科入局。1995年、兵庫県尼崎市で長尾クリニックを開業。外来診療から在宅医療まで「人を診る」総合診療を目指す。この連載が『平成臨終図巻』として単行本化され、好評発売中。関西国際大学客員教授。

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