【医療 新世紀】うつ病を脳活動で見分ける「診断支援システム」を開発 将来は幅広い精神疾患の治療に応用も - zakzak:夕刊フジ公式サイト

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【医療 新世紀】うつ病を脳活動で見分ける「診断支援システム」を開発 将来は幅広い精神疾患の治療に応用も

 人によってさまざまな症状がある鬱病を、脳活動の状態から正しく診断するよう支援するシステムを、国際電気通信基礎技術研究所(ATR、京都府精華町)の川人光男・脳情報通信総合研究所長らが開発した。機能的磁気共鳴画像装置(fMRI)で記録した1200人以上のデータを使い、鬱病の人に特徴的な脳活動パターンを特定。2021年度中に国に医療機器プログラムとして承認申請する。川人さんは「5年後に医療現場への普及を目指す。将来は幅広い精神疾患の治療にも役立ちそうだ」と話す。

 ▽一致は3割

 国内の精神疾患の患者数は増加傾向にある。鬱病などの気分障害や統合失調症、ストレス障害を中心に350万人。生活の質の低下を含む健康損失は、30年に全疾患で1位になると予想される。

 一方、精神疾患は患者によって症状が異なることが多い。別の疾患でも似た症状が重なり合っており、経験を積んだ精神科医でも診断が難しいことがある。鬱病患者を複数の医師が診断した結果が一致するのは3割程度と他の病気に比べて低い。

 ▽脳回路マーカー

 日本では08年ごろから国を挙げた研究プロジェクトが始まった。ここ数年は川人さんら神経科学者や精神科医、人工知能(AI)の専門家が協力し、精神疾患の診断や治療につながる新たな手法を探ってきた。

 川人さんらは脳活動を高精細なリアルタイム画像で捉えることができるfMRIを利用。健康な人と鬱病の人の平常時の脳活動を記録したデータを1200人以上集めた。

 かつては記憶や言語など特定の脳活動領域を調べる手法が主流だった。これに対し、川人さんらは脳を約380の小さな領域に分け、それを1対1でつなぐ数万通りの「脳回路」が活性化するパターンを網羅的に調べる手法を使った。

 膨大なデータをAIを使って解析すると、鬱病の人で弱くなったり、強くなったりしている複数の脳回路が浮かび上がった。この「脳回路マーカー」を使うと、患者を約70%の確率で正しく見分けることができるのを確かめた。

 ▽フィードバック

 川人さんは「将来は患者の脳画像をネット経由で分析し、精神科医による正確な診断を補助することが可能になる」とみている。

 統合失調症やストレス障害のマーカーも開発中。「いずれは薬や認知療法が効く人と効かない人を見分けることもできるようになる」と川人さん。診断の先にある「治療」の可能性も見えてきた。自分の脳活動の状態をグラフィック化した画面を見ながら、ゲームのように念じながら画面を操作すると、脳の活動パターンを変えられることが分かってきたのだ。

 「ニューロフィードバック」と呼ばれるこの手法を使い、川人さんらは鬱病や統合失調症、心的外傷後ストレス障害(PTSD)など幅広い心の病の治療を目指す。

 PTSD治療の臨床研究を担当するATRの千葉俊周研究員は、「精神疾患のメカニズムには謎が多い。研究を手掛かりに脳の理解が大きく進むはずだ」と話す。

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