【ドクター和のニッポン臨終図巻】音楽プロデューサー・酒井政利さん 五輪担当なら新たな伝説も - zakzak:夕刊フジ公式サイト

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音楽プロデューサー・酒井政利さん 五輪担当なら新たな伝説も

 コロナ禍が続き、大好きなスナックでカラオケを歌うこともできず、しんどい夏。仕方ないので寝る前に部屋でひとり、スマホ片手にYouTubeに合わせてボソボソと歌っています。

 カラオケのテロップには、作詞と作曲した人のお名前は出ますが、仕掛け人であるプロデューサーのお名前は出ません。

 だから、この人の偉大な功績も、よく知らない人が多いことでしょう。鬼籍に入られたことで初めて僕らはその人の軌跡を知ることもある…手掛けたアーティストは300組以上、プロデュースした曲の総売り上げは累計でナント約8700億円。

 僕の青春時代を彩ってくれた多くのアイドル、いまだに口ずさむ歌謡曲の数々も、この人がいなければ、存在していなかったかもしれません。

 そんな伝説の音楽プロデューサー、酒井政利さんが7月16日、都内の病院で死去されました。享年85。死因は、心不全との発表です。酒井さんは今年5月下旬、持病のアレルギー疾患のために検査入院をしました。幸い疾患は改善されたものの、体力が弱ってしまい、そのまま入院生活を継続。16日に体調が急変したとのことです。

 検査入院なのに、そのまま死ぬことなんてあるの? この訃報に戸惑った方も多いはず。

 しかし、高齢になればなるほど、たった1週間入院していただけでも大きなダメージを受けて、日常生活に戻れなくなるケースはままあります。これを「入院関連機能障害(HAD)」といいます。急性期病院に入院した高齢者の約3割が、HADになるというデータがあります。

 足腰が弱まって歩けなくなったり、検査のための薬や治療によって内臓に新たな異常が起きたり、突然の生活環境の変化に体力が低下したり、認知機能が一気に低下することも…。病気が回復しても自宅には帰れず、そのままリハビリ病院に転院となることも少なくありません。

 「長生きしてもらいたくて入院させたのに、なぜ?」と嘆くご家族もいます。もちろん病院もご家族も悪くないです。しかし、80歳を過ぎてからの入院には、必ず何らかのリスクが発生します。ご家族は、「何があってもおかしくない」という覚悟を持ってから入院を見守るべきです。

 しかし酒井さんは入院中もしっかりとお仕事をされて、この夕刊フジの10年に亘る連載の、最後の原稿が届いたのは死の前日だったとか! もしも五輪開会式のプロデューサーを酒井さんが担当していたら、新たな伝説が生まれていたのかも…。

 ■長尾和宏(ながお・かずひろ) 医学博士。東京医大卒業後、大阪大第二内科入局。1995年、兵庫県尼崎市で長尾クリニックを開業。外来診療から在宅医療まで「人を診る」総合診療を目指す。この連載が『平成臨終図巻』として単行本化され、好評発売中。関西国際大学客員教授。

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