【がんに克つ!iPSで変わる免疫療法】抗腫瘍作用の非常に高い免疫細胞をiPS細胞で作成「iPS-NKT細胞動注療法」 - zakzak:夕刊フジ公式サイト

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【がんに克つ!iPSで変わる免疫療法】抗腫瘍作用の非常に高い免疫細胞をiPS細胞で作成「iPS-NKT細胞動注療法」

 味覚や嗅覚などの五感、嚥下(えんげ)などの機能、さらには外観に関わる頭頸部がんは、近年、治療法が進展している。内視鏡を用いた手術(内視鏡下手術)やピンポイント照射の放射線治療、抗がん剤を直接患部に注入する動注化学療法、放射線療法と薬物療法の組み合わせなどさまざまだ。しかし、効果が上手く得られないこともある(別項参照)。

 それを改善すべく、抗腫瘍作用の非常に高い免疫細胞をiPS細胞で作成した「iPS-NKT細胞動注療法」の治験が、昨年からスタートしている。すでに1例目が終了し、新たな治験者を募集中だ。

 「治験で安全性を確かめた上で、新たな治療の選択肢になるように研究を進めたいと思っています。この治療法が発展すれば、将来的に、ご高齢の方への治療や仕事を継続しながらの治療も、行いやすくなるのではないかと考えています」

 こう話すのは、千葉大学医学部附属病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科の飯沼智久助教=顔写真。先の治験メンバーであり、頭頸部がんの新たな治療法の開発に尽力している。

 たとえば高齢者の場合、心臓病などの持病を抱えているとがん治療が難しいことがある。また、体力が低下していれば、放射線治療や薬物療法も行いづらい。だが、健康な人の細胞で作った「iPS-NKT細胞」ならば、体内の免疫を活性化し増殖させ、がんを攻撃できるようにすると考えられる。高齢であっても、免疫が活性化して強い抗腫瘍作用があれば、がん細胞を撲滅することは可能だ。

 一方、働き盛りで体力はあっても、頭頸部がんで放射線治療を約7週間、通院で受け続けるのは容易なことではない。のどや口腔内への照射では、口内炎がひどくなれば食事ができなくなるなど、仕事を続けながらの通院には限界がある。

 「既存の治療法とは異なる『iPS-NKT細胞』を用いた治療法を、頭頸部がんの進行がんや再発がんの新たな治療の選択肢に発展させたいです。既存の治療法では治すのが難しいがんに対抗するには、いろいろなアプローチの治療法があった方がよいでしょう」

 ただし、「iPS-NKT細胞動注療法」を将来的に簡便な治療法として応用するには、まだ改良の余地があるという。この治験では、脚の付け根の鼠径部から血管内にカテーテルを入れて、頭頸部のがんに直接「iPS-NKT細胞」を届けるため、入院治療が必要になる。仕事との両立を考えるなら、通院で行えるような工夫も必要だ。

 「私たちが過去に研究していたNKT細胞療法では、鼻の粘膜にNKT細胞の活性剤を投与することで、より良い効果につながりました。より簡便な方法を模索して工夫することも、将来的に第4の治療としての普及につながると考えています」

 iPS-NKT細胞の治療の今後の発展については、次回紹介する。 (取材・安達純子)

 ■飯沼智久(いいぬま・ともひさ) 千葉大学医学部附属病院耳鼻咽喉科・頭頸部外科助教。千葉大学医学部卒。同大学大学院医学薬学府博士課程を経て、2018年から現職。耳鼻咽喉科一般と頭頸部がん治療に従事し、がん免疫やアレルギー学を研究テーマとしている。

 ■頭頸部がんの治療における問題点

 頭頸部がんの大半を占める扁平上皮がんでは、進行がんの治療は手術や放射線治療、抗がん剤治療を組み合わせて行われる。しかし、治療による身体への負担は重く、根治が難しい場合もある。治療終了後の再発や転移もしばしば問題になるため、さまざまな検討が行われているが、未だに有効性が十分に確認された治療法がない。※千葉大学医学部附属病院の資料から

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