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条件を薄切りで出す常套手段 北の「サラミ戦術」を許すな 

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 北朝鮮が「非核化」に応じるのは、国内経済が悪化するなか、「経済制裁緩和」や「外国からの経済支援」などの“見返り”を求めるためのバーターであることは明確だ。

 同国は、朝鮮労働党中堅幹部らに「3年間で非核化を達成する」と説明しているという。脱北した元党幹部の証言だ(朝日新聞6月3日付)。金正恩(キム・ジョンウン)朝鮮労働党委員長は3年間で経済建設に総力を挙げるとの新戦略を掲げている。見返りを得て経済を発展させなければ、国内の不満が高まり、自壊へのカウントダウンが始まる。

 見返りを求める「バーターとしての非核化」は当然、本気のものではない。非核化を小出しで段階的に行い、その都度、経済制裁の緩和や経済支援を求めようとしている。

 サラミソーセージを薄く切るように、その都度、小出しで条件闘争する「サラミ戦術」は北朝鮮の得意とするところだが、今回も同じことをしている。米国が求める早期の「完全かつ検証可能で不可逆的な非核化(CVID)」との間では溝があることは明白だ。

 ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相が5月31日、9年ぶりに北朝鮮を訪問し、正恩氏および李容浩(リ・ヨンホ)外相と会談した。

 正恩氏は、非核化について「新たな方法で、各自の利害を満足させる解決策を見いだし、段階的に解決していく」と強調した。ラブロフ氏も「非核化するには、何段階かなければならず、各段階で交渉が必要だ」「核問題は制裁が解けなくては完全に解決されない」と李氏に応じた。

 ラブロフ氏は会談後、朝鮮半島情勢の正常化には「相当な時間」が必要であり、「全てを即時に要求する誘惑を避けなければならない」とも語っている(産経新聞6月1日付)。北朝鮮の「段階的措置」という「サラミ戦術」を支持した格好だ。正恩氏は中国の習近平国家主席との会談でも「段階的措置」を主張している。

 懸念されるのは、米国内でも早期のCVIDは困難との見方が出始めたことだ。米ニューヨーク・タイムズ紙は5月28日、北朝鮮には大量の核物質や核関連施設があり、非核化を達成するためには「15年はかかる」との核専門家の見通しを伝えた。

 北朝鮮は時間を掛けて非核化を小出しに進め、その都度、経済的な「見返り」を要求する。そして「微笑外交」を続け、正恩氏は「平和構築」に努力している指導者であるとのイメージを持たせることになる。

 最近、私が意見交換した複数の朝鮮半島関係筋は「北朝鮮の完全非核化は絶対にない」と口をそろえて断言した。国際社会は北朝鮮の狙いを冷静に分析する必要がある。

 ■八木秀次(やぎ・ひでつぐ) 1962年、広島県生まれ。早稲田大学法学部卒業、同大学院政治学研究科博士課程中退。第2回正論新風賞受賞。高崎経済大学教授などを経て現在、麗澤大学教授。教育再生実行会議委員、フジテレビジョン番組審議委員、日本教育再生機構理事長など。法制審議会民法(相続関係)部会委員など歴任。著書に『憲法改正がなぜ必要か』(PHPパブリッシング)、『公教育再生』(PHP研究所)など多数。

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