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国境を越えた売春ビジネス 中国共産党の取り締まりターゲットに

 中国共産党・政府がいま何をターゲットにしようとしているのか。

 その傾向を知る簡単な方法の一つに、国内メディアにおける露出度がある。

 とくに権威メディアと呼ばれる党機関紙・テレビがしょっちゅう取り上げる社会問題となれば、そう考えて間違いないだろう。

 その権威メディアがこぞって昨年末から力を入れて取り上げている問題がある。

 中国語で「跨境売淫」と呼ばれる「越境売春」である。

 習近平政権の下で、党員の規律違反が徹底的に問われたのを機に、国内でも風紀に対する目が厳しくなり、売春に対する風当たりも強くなっている。

 かつて“世界一の歓楽街”とまで呼ばれた広東省の東莞が、徹底的な「掃黄」(売春行為の取り締まり)によって、すっかりクリーンアップされてしまったことなどは、その典型例だろう。

 そしていま、この「掃黄」の波は、国内にとどまらず国境を越えて取り締まりが行われているというのだ。

 北京の夕刊紙の記者が語る。

 「というのも売春ビジネスそのものが、いまでは国境を越えて海外で盛んになっているという実態があるからです。そのパターンは中国の犯罪グループが、海外に施設を用意し、国内で客を募集して、旅行と同時にサービスを提供するというものです」

 犯罪の拠点となっているのは、やはりインターネットである。

 旅行先として名前が挙がっているのは、目下のところ東南アジアが目立っている。

 「昨年末から大きな騒ぎになってきたのは、マレーシアを拠点に大々的に売春を斡旋していたグループの摘発です。彼らはマレーシアでいくつもの別荘を確保していて、そこに客を誘導するというやり方をしていました。国内では科学技術関連の企業の運営するサイトということで、4つのホームページを持っていました」(同前)

 事件では、深セン警察が現地マレーシアの警察に協力をあおぎながら捜査を進め、今年、一気に犯罪グループを検挙したという。

 「約4カ月の内偵の末の逮捕劇で、最終的に349人の犯罪グループ構成員が捕まりました。もちろん、そこでは国境を越えた犯罪グループの連携が見て取れました。しかも儲けも莫大で、2017年だけでも1億元(約17億円)もの大金を稼いでいたといわれます」(同前)

 女性たちは、深セン、広州、長沙などから集められていたというから、場所だけが外国という売春の形態だ。

 それにしても数年前まで犯罪者の引き渡しぐらいでしか成立しなかった警察と警察の関係が、いつのまにか連携して犯罪組織を摘発するまでになっているのには驚かされる。

 ■富坂聰(とみさか・さとし) 拓殖大学海外事情研究所教授。1964年生まれ。北京大学中文系に留学したのち、週刊誌記者などを経てジャーナリストとして活動。中国の政・官・財界に豊富な人脈を持つ。『中国人民解放軍の内幕』(文春新書)など著書多数。近著に『中国は腹の底で日本をどう思っているのか』(PHP新書)。

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