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若者はどこに? かつてラスベガスと競っていた町「アトランティックシティー」

★松井政就 アトランティックシティーの今(2)

 かつてラスベガスと並ぶカジノの町として、世界中からファンが押し寄せていたニュージャージー州アトランティックシティー。近年はずいぶんさびれたといわれるが、それが本当かどうか、自分の目で確かめようと、ニューヨークからバスに揺られてやってきた。

 来てみるとカジノは静まりかえり、老人がスロットをしていた。若い人はどこにいるのかとぼくはフロアを捜したが、どこもかしこも老人ばかり。

 アメリカのカジノは迷いやすいレイアウトのため、行き先を決めずに歩くと同じ場所をグルグル回ることになる。老人ばかり目に入るのはそのせいかと思い、上の階に上がってみると、もっと多くの老人がいた。

 そんなはずはない。ここはアトランティックシティーだ。若者がいないはずがないじゃないか…。

 無人島に漂着した人が、ほかに誰かいないか捜し回るかのように、ぼくはカジノからカジノへと移動した。でもやっぱり見つからない。

 カジノの入り口にはバス乗り場があり、待合所に人が大勢座っていた。これだけの人数ならさすがに若者もいるだろうと、近づいたぼくは絶句した。一人残らず老人だった。

 彼らは一斉に顔をあげ、珍しいものでも見るかのようにぼくを凝視した。同じアメリカでも、ラスベガスでは絶対にない光景だ。

 バスが来ると老人はヨロヨロと立ち上がり、おぼつかない足取りで乗り込んでいった。ここがカジノでなければ、高齢者施設の送迎バスにしか見えないだろう。

 アトランティックシティーがさびれたというのはある程度は事実だろうと思っていたし、自分の目で現場を見るまで、単に客が減った程度のことだと思っていた。

 だが、事態は深刻だった。かつて若者がひしめいていた町は、今や「老人の海」と化していた。時代や文化を創るのはいつだって若者のはず。そんな若者が町から姿を消したのだ。

 現実を目の当たりにし、ぼくはギャンブルをしに来たことも忘れ、ボードウォークをあてもなく歩いた。

 かつて大勢の人たちで賑わっていたメーンストリートは、老人のほかカモメとリスの遊び場となっていた。老人が投げたお菓子をカモメが取り合いしていた。カモメとカラスの違いを除けば上野公園と変わらない。

 歩くうち、外装が新しいカジノに来た。ここは以前トランプ氏が経営するカジノだったが、数年前に廃業し、今年からハードロックカジノとしてリニューアルオープンしたばかりだった。

 さすがはハードロックカジノである。ドアを開けると、ギンギンのエレキやドラムの激しいリズムが聞こえてきた。明らかに若者向けの曲で今度こそ若者がいるはず…。期待を込めて入っていくと、老人ばかりがスロットをしていた。(作家・松井政就)

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