zakzak

記事詳細

明治150年「戊辰戦争敗者」を熱心に報じる魂胆

★(2)

 今年は明治維新から150年にあたり、10月23日には政府による記念式典が開催された。朝日新聞もこの維新150年に注目して、多くの記事を掲載していた。

 まず、同月21日には社説「明治150年 議論を重んじた先人たち」。22、23日には文化・文芸面で「開戦150年」(上下)。23、24日には記念式典の記事。そして、23日から29日まで夕刊に5回連載で、刀祢館正明(とねだち・まさあき)記者による「戊辰の敗者をたどって」が掲載された。

 維新150年をめぐる朝日新聞の記事の特徴は、維新そのものより、戊辰戦争に注目していることであり、特に、戦争で負けた側に立って報道していることである。従って「開戦150年」であり、「敗者をたどって」というわけである。

 では、なぜ朝日新聞は、このような報道を行ったのか。

 それは、連載「戊辰の敗者をたどって」の第3回「長州と仲直り『まだ早い』」(10月25日夕刊)を読んで、納得がいった。

 刀祢館記者は、日本記者クラブが9月、戊辰戦争150年にちなむプレスツアーに参加し、福島県会津若松市を訪ねた。会津藩藩校を復元した「日新館」を訪れ、宗像精(ただし)館長の話を聞いたという。

 この際、「長州といまだに『和解』していないと言われるが」という問いに対し、宗像館長は「そろそろどうかというが、その手には乗らない。黙って、静かに、仲良くしていく。でも仲直りはできない。歴史は消すべきではない」と答えているのだ。

 さらに、宗像館長は「虚言を言うことはならぬ」などで知られる、会津藩士の子弟が学ぶ「什の掟(じゅうのおきて)」を挙げて、「これを文部科学省は教科書に載せてほしい。安倍晋三首相も(これを守って)本当のことを言えばいいんだな」と言って、記者たちを笑わせたという。

 また、会津藩・斗南藩に関する著作のある作家の星亮一さんは昨年、「一方的に会津に賊軍のイメージを植え付けた明治政府は間違っていたと、今の政府が認めたらいい。それも長州(=山口県)の(安倍)首相がいる間に」と、刀祢館記者に提案したという。

 これで得心したのは、朝日新聞による戊辰戦の敗者に対する熱心な報道は、会津への同情というより、長州への批判なのだろうということだ。要するに「安倍政治を許さない」という、安倍バッシングの方針に立脚するのではないかと。

 それは前述した10月21日の社説にある、「新しい時代を切り開こうと苦闘した先人の営みは、議論を避け、仲間内の言葉に酔い、独善がまかり通る『いま』に、警告を発しているように見える」というフレーズと、照応しているわけである。

 なお、戊辰戦争に対する、「勝てば官軍」史観の訂正を主張するのであれば、朝日新聞は「アジア太平洋戦争」に対する東京裁判史観にも、同じ見方を適用しても良いのではないのか。

 ■酒井信彦(さかい・のぶひこ) 元東京大学教授。1943年、神奈川県生まれ。70年3月、東大大学院人文科学研究科修士課程修了。同年4月、東大史料編纂所に勤務し、「大日本史料」(11編・10編)の編纂に従事する一方、アジアの民族問題などを中心に研究する。2006年3月、定年退職。現在、新聞や月刊誌で記事やコラムを執筆する。著書に『虐日偽善に狂う朝日新聞』(日新報道)など。

関連ニュース

アクセスランキング