zakzak

記事詳細

“意味不明”なPV見せられ… さすがのトランプ氏も逃げ出したワケだ!

★アトランティックシティーの今(3)

 どこへ行っても老人しかおらず、若者を捜してカジノからカジノへと歩くうち、ハードロックカジノに行き着いた。ここはかつて、あのトランプ氏が経営していたタージマハルというカジノだったが、数年前に畳んで逃げ出し、ハードロックカジノが引き継いでいた。

 建物も新しく、その名の通りハードロックがガンガン流れている。まさに若者向けの雰囲気で、今度こそ若者がいるはずと思って入っていくと、結局老人がスロットをしていた。トランプ氏でさえ逃げ出したのはこういうわけか…。

 大きなスクリーンにはカジノのプロモーションビデオが映し出されていた。激しいロックの中、音楽に合わせてアニメのミュージシャンがエレキギターをギンギンに鳴らしていた。ぼんやり見ていると、画面の中に意外な人物が現れた。「赤ん坊」である。しかも目はギラギラし、普通の赤ん坊ではない。

 何が始まるのかと思っていると、赤ん坊の目の前に1ドル紙幣がヒラヒラと舞ってきた。何と1ドル札には釣り針がひっかけられている。まるで魚釣りのエサだ。すると突然、赤ん坊が両手を広げてお札に飛びついたのだ。お札はスルリと逃れ、赤ん坊はスクリーンの奥へと消えていった。まるで奈落の底に消えたかのようだった。

 カジノ経営者はこのPVで一体何を言いたいのか? 赤ん坊ですら、お金の前では欲を向き出しにすると言いたいのか? それとも赤ん坊に見えるのは実は大人で、お金の前ではどんな大人も赤子同然となって奈落の底に落ちていくというのか…。どっちにしても不吉である。

 ぼくはカジノを出てボードウォークを歩いていった。カンカン照りの太陽の下、すれ違うのは老人ばかり。彼らの視線が次々と刺さる。ここではぼくのほうが異質なのだ。

 歩いていくと、閉鎖され、ほこりまみれとなった建物に来た。まさに廃虚と呼ぶにふさわしい。建物の名前は黒いペンキで塗りつぶされていたが、それが色あせ、下から名前が見えた。「TRUMP」と書いてあった。かつてトランプ氏が所有していたカジノ施設の残骸だった。

 映画「猿の惑星」で、猿の軍団から逃れた主人公が海岸沿いに歩いていくと、砂に埋まった自由の女神像が見つかるシーンが思い浮かんだ。(作家・松井政就)

関連ニュース

アクセスランキング