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楽しんで!?「朝日杯」連覇…藤井聡太の「タイトル挑戦」近いと実感

★朝日杯将棋オープン戦

 朝日杯は名人戦を手放した朝日新聞が、1982年から始めた棋戦で、何回か名称とスタイルを変えて今日まで続いている。

 最初は「全日本プロトーナメント」で、第1回の決勝三番勝負は私と桐山清澄八段(当時)で戦い、桐山が優勝した。初戦を勝ったのが、私の敗因だったかもしれない。

 第20回からは「朝日オープン選手権」と名称を変え、第21回から挑戦制方式の決勝戦(五番勝負)となった。決勝は堀口一史座五段と杉本昌隆六段(いずれも当時)の若手同士で争われ、堀口が初代優勝者に。羽生善治九段は、第22回から4年連続で優勝している。

 そして2007年から表題の名称となり、決勝を東京の「有楽町マリオン」で、公開で行われる形となった。

 公開対局となっている準決勝は今回、渡辺明棋王対千田翔太六段、行方尚史八段対藤井聡太七段戦となったが、会場は超満員。期待は藤井の連覇がなるかで、女性客が半分を超えたという。

 決勝は期待通り、渡辺-藤井戦となった。この将棋を私はプロジェクターで、盤面と対局者の姿を最後まで見ていたが、一つ気が付いたことがあった。それを翌日行った理髪店の奥さんに言われたから驚いた。

 「藤井君って対局中の顔がかわいいわね。今起きたばかりのようなホンワカした顔をしてるから」

 私も同じことを感じていた。どんなに柔和といわれる棋士でも、例外なく対局中は一瞬、鋭い勝負師の顔を見せるのだが、藤井にはそういう表情がなく、あたかも大好きな詰将棋を解いている、楽しんでいるような表情が最後まで続くのだ。

 その反対に渡辺は、どうやっても自分のペースにならない苦悩、そしていよいよ勝ちがなくなった時の諦めた表情と、形勢が明らかに第三者にわかるほどだった。

 それにしても今、将棋界で一番脂が乗っている渡辺相手に、堂々と追い詰める藤井という存在は、明らかに将棋界に新風を運んでいる。

 現在のタイトル保持者に散々叩かれた経験がないのも、大きな強みだ。

 朝日杯連覇の藤井が、タイトル戦に登場する日は近いと感じさせた一局だった。

 ■青野照市(あおの・てるいち) 1953年1月31日、静岡県焼津市生まれ。68年に4級で故廣津久雄九段門下に入る。74年に四段に昇段し、プロ棋士となる。94年に九段。A級通算11期。これまでに勝率第一位賞や連勝賞、升田幸三賞を獲得。将棋の国際普及にも努め、2011年に外務大臣表彰を受けた。13年から17年2月まで、日本将棋連盟専務理事を務めた。

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