zakzak

記事詳細

羽生世代、渡辺二冠が壁として君臨 平成の将棋界

★平成の将棋界(2)

 羽生善治九段の七冠独占に一番危機感を抱いたのは、同年代の棋士だったと思う。

 羽生の世代には、羽生に劣らない才能の持ち主が多くいたが、永久に羽生に勝てなければ、自分たちは棋士になった意味がないと思えるからだ。

 彼らが羽生に、追いつけ追い越せの目標で精進した結果、佐藤康光九段と森内俊之九段は竜王や名人に、丸山忠久九段は名人、藤井猛九段は竜王、そして郷田真隆九段は王位、王将、棋聖など皆がタイトルを取る、恐ろしい軍団が出来上がったのだった。

 目標が高過ぎただけに、羽生を追いかけているだけで他の棋士より、はるか高みに登ってしまったのだ。

 これを私はS級軍団と称したことがある。順位戦では、A級から絶対落ちないのがS級であり、タイトル戦の予選では、一人負かしても次にまた羽生世代が出てくるということで、他の棋士はほとんど挑戦者にもなれない時代が続いた。

 実際、このS級軍団の6人で、順位戦のA級(以上)在籍は100期を優に超え、名人は羽生か森内のどちらかという時代が、平成14年(2002年)から14年間続いたのだった。

 ただ一人、渡辺明二冠だけはその中に突入しても劣らず、平成16年(04年)から竜王位を連続9年、通算11期保持して、他の棋士の挑戦を撥ね付け続けた。

 結局、平成という時代を大雑把に言えば、初期の群雄割拠時代を除き、羽生世代のS級軍団と渡辺から誰がタイトルを奪うか、誰がこの壁を乗り越えられるかがテーマの時代であったと、言えるだろう。

 しかしさすがのS級軍団も40歳を過ぎた頃から、A級を去る棋士が出て、タイトル戦の登場回数も減った。現在はむしろ30歳前後の棋士がタイトル戦の主役である。

 その先駆けとなったのは、平成22年(10年)、広瀬章人竜王の王位獲得と同26年(14年)、糸谷哲郎八段の竜王獲得である。その後次々と、30歳前後の棋士のタイトル獲得に繋がっていったのだった。

 世代間の戦いが激しくなったところで、平成に終わりを告げたことになる。

 一方女流棋界を見ると、平成初期は清水市代女流六段が四冠を独占(当時、現在は七冠)していたが、里見香奈四冠が出てきてからは、里見の全冠制覇が期待されるような、1強時代となっている。

 ■青野照市(あおの・てるいち) 1953年1月31日、静岡県焼津市生まれ。68年に4級で故廣津久雄九段門下に入る。74年に四段に昇段し、プロ棋士となる。94年に九段。A級通算11期。これまでに勝率第一位賞や連勝賞、升田幸三賞を獲得。将棋の国際普及にも努め、2011年に外務大臣表彰を受けた。13年から17年2月まで、日本将棋連盟専務理事を務めた。

関連ニュース

アクセスランキング