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彗星のように散った軍人・イゴール 姉の大切な友人

 ドブラヴィーチェル、親愛なる日本の皆様!

 “彼は彗星のような男だった”

 私の長姉は、そう冒頭の言葉を発してから、若い頃から知る忘れがたき友人でロシア軍人であった、イゴールの話を語り始めてくれました。

 人格者のイゴールは、若い頃からいつも周りに優しく、その上、自分が先頭に立って行く勇敢さを持っていたので、彼を知る誰からも愛されていました。

 さらに、成績優秀だったイゴールは高校を卒業すると軍の学校に入学し、卒業後はロシア軍の兵士として北コーカサスの数カ国で任務に当たり、持ち前の才能で非常に速く軍のキャリアを駆け上っていきました。

 そこで、いくつかの勇敢な奉仕が認められたイゴールは、さらなる教育のためにモスクワ軍事アカデミーに送られ、卒業後は中佐になり、その後間もなくして、軍事研究所の教官となったのでした。

 これは当時35歳の若さのロシア軍人としては大出世で、正に彗星のように駆け上ったイゴールの人生でした。

 そんなイゴールに、シリアへ行き部隊を指揮する指令が出たのは、2016年の終わりでした。

 そして、彼は婚約者をロシアに残してシリアに旅立って行きました。

 その2カ月後、激戦が続くシリア情勢の噂を聞いて心配になった私の姉は、「お元気ですか」とイゴールの携帯にテキストメッセージを送ってみました。

 まもなく、彼から短い言葉の返信がありました。しかし、それは「踏んばってる」にも「持ちこたえてる」のどちらにも解釈されたので、言葉の意味を理解できなかった姉は、それ以上イゴールに返信しませんでしたが、その日一日彼からのメッセージの意味を考えていると、次第に不安感が姉の心を支配し始めてきました。

 あくる日、別の友人のSNSにアップされた文章を見た姉は、一瞬息が止まりました。

 そこには“イゴールはシリアで地雷によって部下の兵士と共に亡くなった”と彼の生前の写真と共に書かれていたのです…。

 イゴール・ヴォロナ享年37。母親と妹と、シリアから帰ったら結婚すると約束していた婚約者を残して、彼は逝きました。

 姉は涙ぐみながら私に言いました。“今思えば、イゴールがあの短い返信を送った時、既に彼は負傷していて、痛みをこらえながら書いてたのかもしれない。そうでないと、あの言葉の意味が繋がらない…”

 そして、最後にもう一度静かに言いました。

 “彼は彗星のように生きて、そして散った”

 ■ジュリア・ミント 1994年ロシア連邦バシコルトスタン共和国生まれ。エカテリンブルクの医科大を経て、現在は大学院で眼科学を専攻する傍ら、日本人コンポーザーTAMAKIと共にノーザンスタイル・ダンスミュージック・ユニット“Crystal Mint”を結成。シンガーとして、主にヨーロッパで活動中。特技は英語、腕立て伏せ。

Instagram : https://www.instagram.com/crystalmintmusic/

Website : https://crystalmint.info/

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